(社説)男女の賃金開示 格差解消への第一歩に

2022年7月4日 東京新聞

 政府は七月から、男女の賃金格差の現状を開示するよう各企業に義務付ける。

 待遇差は女性の活躍を阻み、能力を生かし切れていない経営の現状を表す。情報の開示を、男女を問わず誰もが能力を発揮し、適切に評価される職場づくりへの一歩としたい。

 日本で非正規を含む女性のフルタイム労働者の賃金は男性より22.5%低く、主要七カ国では最も格差が大きい=グラフ。

 勤続年数も女性は男性より短くパートタイム労働者の比率も主要七カ国の中で最も高い。出産や子育てで昇進をあきらめたり、離職せざるを得なかったりとキャリア形成との両立が難しい現状がある。企業が女性の能力を十分に引き出せていない。

 賃金格差開示の義務づけ対象は常時雇用の労働者が三百人超の企業で全国に約一万八千社ある。

 男性に対する女性の賃金水準に加え、正社員と非正規社員別の数値を公表するよう求める。

 二〇一五年成立の女性活躍推進法に基づいて、各企業には女性の活躍状況の把握とその情報公開が義務付けられた。女性労働者の割合や平均勤続年数の男女差などの公開と、改善に向けた行動計画の策定が求められている。

 賃金格差についても、労働側は当初から開示項目に入れるよう求めていたが、経営側の反対で実現しなかった。

 労働者が能力を発揮しにくい企業には人材が集まらず、株価にも影響する時代だ。情報が開示されれば、各企業は必要な対応を迫られる。開示によって格差是正が進むことを期待したい。

 各企業は情報開示とともに、男女を問わず長時間労働になっていないか、在宅勤務など柔軟な働き方は可能か、育児・介護休業は取りやすいかなど自社の状況も把握する必要がある。その上で、就労環境の改善に加え、性別に関係なく人材育成や登用法も考えるべきだろう。

 多様な働き方の確保は企業価値に直結する。企業経営者は、風通しのよい職場をつくる責任が増していることを自覚すべきである。