「観光促進税と森林環境税」という目的税浮上 必要性があいまいだ
                東京新聞 2017年11月27日

 疑問だらけの新税が十分な説明もなしに決まっていいはずはない。政府・与党が来年度税制改正で検討を始めた「観光促進税」と「森林環境税」は必要性すら曖昧である。安直な増税に反対する。

 どうしても出費が必要であるなら、家計をやりくりして工面するだろう。本当に優先順位が高い施策というのであれば、新税をつくる前に、まずは予算を組み替えて財源を確保するのが筋だ。

 観光促進税は、訪日観光客のほか、出張や旅行に出かける日本人までもが出国するたびに一人千円ずつ、航空券代に上乗せして徴収される方向で議論が進む。

 観光財源の確保が目的なのに、なぜ外国人観光客だけでなく国民も負担させられるのか。受益と負担の原則すら曖昧である。

 訪日客の拡大に血道を上げ、観光立国を成長戦略の柱にしようという官邸の強い意向から、政府内の議論もそこそこに一気に流れが決まったからだ。国税としては二十七年ぶりの新税だが、先月投開票の衆院選の前にも後にも、負担を強いる国民に謙虚で丁寧な説明などはないのである。

 昨年の訪日客は約二千四百万人、日本人出国者は約千七百万人だった。この数字を基にすると税収は年四百億円に上り、観光庁の当初予算の二倍に匹敵する。その四割が日本人出国者の負担だ。

 多言語による観光案内表示やネット通信環境が不十分など観光面の課題はある。だが、本当に必要性が高いのなら既存の予算で優先されるはずである。

 観光庁を所管する国土交通省は、公共事業予算だけで五兆円ある。そのわずか1%を削れば確保できる額だ。

 森林環境税も同じことがいえる。住民税を納める約六千二百万人から年間千円を徴収する案が有力だという。地球温暖化防止や国土保全が目的というが、多くの地方自治体がすでに似たような税を徴収している。温暖化ガス削減の設計で後れをとるわが国で、どう役立てるのか疑問は解消しない。

 さらに大きな問題がある。二つの税は使い道を限定する特定財源が想定される。無駄遣いの温床といわれ、長く新設されなかったものだ。負の象徴だった道路特定財源は必要のない道路を建設したり、マッサージチェアに化けたりして批判を浴びた。

 省庁や族議員の既得権益となり、時代に逆行する。丁寧な説明の努力もなしに、新たな負担など到底受け入れられるものではない。

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