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(社説)相次ぐ原発攻撃 人類の危機を招く暴挙
2022年8月18日 東京新聞
人類や地球環境の危機を招きかねない暴挙である。ロシアが占拠するウクライナ南部のザポロジエ原発が攻撃にさらされている。ロシア、ウクライナ双方が相手の仕業だと非難合戦を繰り広げる。常軌を逸した軍事行動は即刻やめなければならない。
ザポロジエ原発は六基の原子炉がある欧州最大級の原発で、ウクライナの総電力の約二割を賄う。ロシアがウクライナ侵攻直後の三月上旬に制圧した。
原発の運転はウクライナ側の職員が続けているが、ロシアが軍事基地化しており、職員が立ち入れない場所もあるという。八月に入って砲撃が再燃し、送電システムが破損して緊急停止した原子炉もある。
原子炉が損傷を受ければ放射性物質が拡散する危険が生じるし、核燃料を冷却するシステムが破壊されれば、福島第一原発のような炉心溶融につながる。
戦時での民間人保護を定める国際人道法「ジュネーブ条約」が、原発などの「危険な力を内蔵する工作物」への攻撃を禁じているのは、それがもたらす結果の重大さからである。
グテレス国連事務総長はザポロジエ原発周辺での軍事活動の中止とともに非武装地帯を設定することを提唱した。ロシアは拒否しているが、原発を戦場にしてはならない。ロシアは原発から退いてウクライナ側に管理を戻すだけでなく、ウクライナ全土からも即時に撤退すべきである。
ロシアはほかの核関連施設も標的にしてきた。1986年に史上最悪の事故を起こしたチェルノブイリ原発を一時占拠し、ウクライナ第二の都市ハリコフの核研究施設も攻撃した。
原発が戦火に巻き込まれるのは過去にない事態である。テロリストによる襲撃を主体にした従来の核セキュリティーの想定を超えている。原発を攻撃すれば核兵器を使用するのと同じ効果を望める、とロシアをまねする国や勢力が現れる恐れも否定できない。
日本などの原発保有国は防護態勢の在り方をはじめ核セキュリティーを見直す必要がある。
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