安保改定60年 安定と価値の礎として          朝日新聞

 60年前のきょう、現在の日米安保条約が調印された。
 米軍の基地使用だけが明記されていた片務的な旧条約を、岸信介首相が改定し、米国に日本防衛の義務を課した。以来、日本の外交・安全保障政策の基軸であり続けている。 一方で、安保闘争といわれる大規模な反対デモのなか、国会承認が強行された歴史も思い起こされる。それは5年前、安全保障関連法の成立に突き進んだ安倍首相の姿に重なる。
 日本では安保条約が憲法より上位にある――。過重な米軍基地の負担に苦しむ沖縄で何度も語られてきたこの言葉は、本来、安保が守るべき価値が、その名のもとに踏みにじられてきた現実を物語る。
 安保条約は前文に「民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配」の「擁護」を掲げる。こうした普遍的な価値を重んじ、国際規範に基づく秩序の形成に寄与することこそ、日本が進むべき道であり、それに資する安保でなければなるまい。だが、米ソ冷戦の30年をへて、ポスト冷戦の30年を振り返った時、軍事的な協力態勢の強化と、繰り返される自衛隊の海外派遣によって、憲法9条に示された理念が後退し続けていると言わざるをえない。さらに今、「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領の登場で、米国自体の近視眼的な判断が安全保障のリスクとなっている。国際秩序の擁護者でなく、むしろ混乱要因となった米国とどう付き合うのかは、これまで以上に難題だ。
 この先の日米関係を考えるうえで、心に留めるべきことは、いくつもある。
 第一に、日米安保を対立の枠組みにしてはならない。米中両大国が覇を争う時代は続くだろうが、中国の隣国でもある日本は、米中の共存を促すべきだ。
 第二に、米国の単なる代弁者であってはならない。地域や国際社会のために何が有効か、日本自身が主体的に考え、必要な時には米国に苦言を呈さねばならない。
 第三に、国民の理解と支持が不可欠だ。安保条約と同時に結ばれ、在日米軍に様々な特権を認めた日米地位協定によって、沖縄に限らず、日本の各地で、住民の暮らしや権利が脅かされている。この状況は一日も早く解消しなければならない。
中国の軍拡や北朝鮮の脅威など、日本を取り巻く環境の厳しさを考えれば、日米安保の重要性はこれからも変わるまい。であればこそ、米国にただ付き従うのではなく、安定した国際秩序をいかに築くか。60年の積み重ねを踏まえた深慮を、日本外交が示す時である。


 安保改定60年 日米同盟強化へ不断の努力を          読売新聞

◆共同対処広げて抑止力高めよ
 アジア・太平洋の平和と安定を維持する上で、日米同盟の重みは増している。不断の努力で抑止力を高めるべきだ。
岸首相とハーター米国務長官が現在の日米安全保障条約に署名してから、19日で60年を迎える。1952年に発効した旧条約は、米軍への基地提供に主眼があった。改定により、米国の日本防衛義務が明記された。
当時は、自衛隊と米軍の協力が拡大することで「戦争に巻き込まれる」として、安保反対のデモが吹き荒れた。岸氏は、新条約の承認と引き換えに退陣した。
◆アジア地域安定の礎に
 条約改定が正しい選択だったことは、歴史が証明している。
ミサイルを搭載したロシアの原子力潜水艦の活動領域は、オホーツク海に限定されている。米軍による抑止効果にほかならない。96年の台湾海峡危機で、米国は空母部隊を台湾近海に派遣し、中国による威嚇を封じ込めた。米政府が、沖縄県の尖閣諸島は対日防衛義務の対象であると明言していることは、中国へのけん制につながっていよう。中国軍は総兵力200万人、ロシア軍は90万人で、23万人の自衛隊を圧倒する。人員だけでは単純に比較できないが、在日米軍と太平洋に展開する米海軍が、日本の領土や海上交通路の安全に寄与しているのは明らかだ。
 冷戦終結を踏まえ、日米両国は96年、安保共同宣言をまとめた。同盟がアジア・太平洋の安定を支える礎であると、再確認した。
 民主党の鳩山政権は、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設に関して、無責任な対応を繰り返し、米国の不信を招いた。安倍首相が政権復帰後、集団的自衛権の限定行使を認める安全保障関連法を成立させ、同盟を立て直したことは評価されよう。
読売新聞社と米ギャラップ社の共同世論調査では、安保条約が地域の安全に役立っていると考える人が7割に達する。
条約の定めがあるだけでは、同盟は機能しない。米国との間で、同盟の役割と将来像について認識を共有する作業を絶えず行い、信頼を醸成していく必要がある政府は、日米安保体制の重要性を国民に丁寧に説明し、日本が一定の負担と役割を担うことに理解を求めていかねばならない。
 日本を取り巻く安全保障環境は、なお不安定である。軍事、経済両面で台頭する中国は影響力を広げ、太平洋をはさんで米国と覇権を争う。北朝鮮は核開発を放棄せず、ミサイル能力を向上させている。
◆増大する新領域の脅威
 従来の陸・海・空に加え、宇宙やサイバー空間など新たな領域で脅威が増大している。同盟の抑止力を高めることが欠かせない。
 日米同盟を土台として、インドや豪州などと多面的に防衛協力を進めていくことも大切である。懸念されるのは、自国第一主義を掲げるトランプ米大統領の批判の矛先が、日米安保条約にも向いていることだ。日本には米国の防衛義務がないことから、「不公平な合意だ」と主張する。
 神奈川県横須賀市の米軍基地は、インド・太平洋に展開する米艦船の保守・点検機能を持つ。沖縄の米海兵隊は、日本の南西諸島にとどまらず、広範な地域の緊急事態に対処する。在日米軍基地を拠点に、米国が軍事的影響力を確保することで、米国の企業や国民は様々な恩恵を受けていよう。安保条約は非対称の協力関係であり、「片務的」との一方的な批判はあたらない。米国では、多大な犠牲を払って「世界の警察官」の役割を果たすことに懐疑的な人が増えた。内向き志向は容易には変わるまい。
◆駐留経費交渉粘り強く
 同盟関係を安定的に機能させるには、自衛隊の役割を広げていくことが重要だ。
 安保関連法の制定で、自衛隊は訓練時の米艦艇などの防護を担うようになった。新協定に基づく米軍への給油も行っている。自衛隊と米軍の共同対処を新領域にも広げ、様々な事態に切れ目なく対応する体制を整える必要がある。米国は、日本に在日米軍の駐留経費の負担増を要求しており、難しい交渉が予想される。米政府を通じて最新鋭の装備を購入する仕組みについては、透明性の確保と価格の適正化が求められよう。
 米国は中露に対抗し、日本を含むアジアへの中距離ミサイルの配備を検討している。政府は、自らの立場や実情を粘り強く米国に説明し、懸案の解決を目指さなければならない。


 日米安保条約改定60年 激動期に適合する同盟に           毎日新聞

 日米安全保障条約改定の調印から60年を迎えた。米軍駐留を認める旧条約を更新し、米国の日本防衛義務を明確にした。同盟の土台である。
 1960年は米ソ冷戦のさなかだった。戦争に巻き込まれると訴える反戦平和の大規模な反対運動が起き、社会は騒然となった。それでも日本が再び戦禍を被ることがなかったのは、平和主義の理念だけでなく世界最強国との同盟が結果的に抑止力となったからだろう。60周年に先立ち、茂木敏充外相の表敬を受けたシュルツ元米国務長官は「引き続き日米同盟が強固であるよう願っている」と述べた。レーガン政権で日米関係の強化を進めたシュルツ氏は同盟を「庭造り」にしばしば例えた。手入れを怠れば荒れ放題になるという戒めだ。
 いまの日米関係は管理が行き届いているだろうか。

 抑止力を持つ安定装置
 「日本が攻撃されればあらゆる犠牲を払って米国は第三次世界大戦を戦う。しかし、米国が攻撃されても日本は助ける必要はまったくない」トランプ米大統領は昨年、日米安保条約は不公平だと米メディアに語った。持論の日本による安全保障の「ただ乗り」論である。同盟は脅威を共有する国同士が軍事的な行動を共にする枠組みだ。ただし、現行憲法下で海外での日本の軍事行動は制約されている。
 条約は一方で米軍への基地提供を義務付けた。米軍は抑止力を提供しただけでなく、日本周辺海域の航行の安全を確保し、貿易の拡大など経済的な恩恵も双方にもたらした。共通の敵だったソ連の崩壊後も同盟が存続したのは、北朝鮮や中国など新たな脅威に対処する安定装置としての役割を見いだしたからだ。日本は朝鮮半島や台湾海峡での有事を想定した周辺事態法や有事関連法、集団的自衛権行使を認めた安保関連法を次々と制定した。米同時多発テロ後の対テロ戦争ではインド洋に補給艦を派遣し、イラクに自衛隊部隊を送った。いずれも米国の軍事行動への支援だ。米国も東日本大震災時に2万人を超える米軍を被災地に派遣した。オバマ前大統領の被爆地・広島訪問は成熟した関係を物語った。日米が強固な関係を築いたのは、ともに役割を拡大し、相互に信頼を高めてきたからに他ならない。「ただ乗り」は的外れの指摘だ。その米国は国際社会での影響力を低下させている。長引くテロとの戦いで疲弊し、世界の課題に関わろうとしなくなった。一方で中国やロシアは強権的な振る舞いを隠さず、米国に対する挑戦を続けている。

 米中露の力関係が揺らぎ、激変期に差し掛かる国際情勢の変化に日本はどう対応すべきだろうか。
 対米追従からの脱却を
 まず同盟を固め直す必要がある。トランプ氏は米軍駐留経費の負担増額を日本に要請しているが、同盟の価値はカネで測れるものではない。
 負担の多寡で配備する軍事力を決めるなら、適切な抑止力にはならない。共通の価値観を守る目的がかすみ、同盟は衰退する。同盟をトランプ氏は弱めるかもしれない。だからといって近い将来、軍事力と経済力で米国に勝る国が現れるとも思えない。日本にとって米国との同盟が安全や経済の利益を最大化する基盤であることに変わりはない。同盟の維持と強化は最も現実的な選択だろう。北朝鮮の核・ミサイルや中国の海洋進出には米国を基軸に同盟国同士の連携が不可欠だ。すでに日米韓や日米豪、日米印などの枠組みがある。日本は新たなネットワークづくりを引き続き主導すべきだ。

 米国依存が生んだ対米追従の構図から脱却することも迫られる。
 今回の中東海域への護衛艦派遣は米国に配慮した結果だ。自衛隊の海外派遣は日本の安全を優先にすべきで安易な運用は平和主義を損なう。
 米国追従のいびつさを象徴するのが沖縄の米軍基地問題である。
日本政府は安保をたてに沖縄の反発を抑え込もうとしている。そうして建設された基地の運営は不安定になる。米国の利益にもならない。駐留米軍の特権を認めた日米地位協定も手付かずだ。事故の危険と騒音に苦しむ住民の負担を軽減できるよう地位協定の改定は急務だ。互いの信頼が低下すれば同盟も揺らぐ。
現実の世界に適合する同盟を構築する。そのために、不断の手入れが重要なのは言うまでもない。


 日米安保改定60年 同盟発展が平和もたらす         産経新聞

■再改定と防衛力の強化を図れ
 日米両政府が、旧日米安全保障条約に代わる現行の安保条約への改定に署名してから、19日で60年を迎えた。
 昭和26年に結んだ旧条約と合わせ、新旧の安保条約は日米同盟体制の基盤となり、日本の独立と平和、そして自由を守ってきた。日米同盟は世界の歴史の中でも極めて成功した部類に入る。それは日本の防衛を実現したことにとどまらない。当初は極東の、そして今はインド太平洋地域ひいては世界の平和と安定の礎としての役割を果たしているからである。日米安保の国際公共財としての意義も銘記しつつ、新たな時代へ向けて強固な同盟の維持、発展を目指したい。

≪世界安定の「公共財」だ≫
 日米の外務・防衛担当の4閣僚は17日、共同発表で改定60年を祝い、「両国が共有する価値及び利益を守るため、献身的に奉仕する自衛隊及び米軍に感謝の意を表する」と強調した。戦後日本の平和は憲法9条のおかげではない。外交努力に加え、自衛隊と、日米安保に基づく駐留米軍が抑止力として機能してきたから平和が保たれてきた。60年の間、同じ安保条約の下で世界の情勢はさまざまに変化した。はじめの約30年間はソ連の脅威への対処に追われた。ソ連崩壊後は同盟の危機が叫ばれ、日米は平成8年の安保共同宣言で、日米安保をアジア太平洋地域の安定の基礎と再定義した。その後、中国の急速な軍事的、経済的台頭と北朝鮮の核・ミサイル開発の進展で日米安保が備えるべき新たな対象が明確になった。尖閣諸島など南西諸島防衛の重要性が増し、朝鮮半島有事と台湾海峡危機、南シナ海情勢への対応も真剣に考えなければならなくなっている。安倍晋三首相は平成27年、集団的自衛権の限定行使を容認する安保関連法制定を実現した。これにより、北朝鮮問題対処などに日米が協力して当たっている。
 旧安保条約は占領終結後も米軍が日本に駐留すると定めつつ、米国の対日防衛の義務を明記しなかった。駐留米軍を日本の内乱鎮定に使用できる条文もあった。これらは独立国にふさわしくないと当時の岸信介首相は考え、左派勢力の猛烈な反対をよそに現行条約を結んだ。内乱条項は削除され、米国の日本防衛義務(5条)と日本による駐留米軍への施設・区域(基地)の提供(6条)が定められた。日本は米国を防衛する義務を負わないため、全体としてバランスを取る「非対称の双務性」と説明されている。
在日米軍基地のおかげで、米軍は西太平洋から中東まで展開できる。日米安保は米国の世界戦略に不可欠の存在となっている。

≪自ら守る気概取り戻せ≫
 そうであっても、日米安保には不安定な点もあり、空洞化や破綻を招かぬよう努力が必要だ。
 日本の集団的自衛権の行使には過度な制限がある。安全保障にうとい首相が登場すれば、有事に日米が守り合う関係になれず、同盟が危機に陥りかねない構造的な不安定性が残っている。多くの野党が集団的自衛権の行使容認は違憲だと叫んでもいる。日米安保への「片務的」という批判をトランプ米大統領も口にした。米政府から駐留米軍経費の増額圧力が高まっている。日本政府は安保条約の意義を繰り返し説くべきだが、不安定性の問題を放置しては危うい。日米安保には副作用もあった。戦後日本人は米国への依存心を強め、自国や世界の平和を守る自立心と気概を失った。だが、それでは済まされない時代になった。国の世界における相対的国力は低下しつつある。トランプ氏やオバマ前大統領が「米国は世界の警察官ではない」と語るなど米国には内向き志向が現れている。宇宙やサイバーなど新たな領域への取り組みも重要だ。中国の軍拡はなお急ピッチだ。
  成功した安保条約だが、そろそろ再改定が必要ではないか。産経新聞は平成23年、再改定案を提言した。「片務性」批判という条約上の不安定性を除くため、再改定で日米が真に守り合う関係を整えたい。日本自身が一層、防衛力強化に努めるべきはいうまでもない。その際、敵基地攻撃能力の保有を含め「専守防衛」から「積極防衛」へ転換し、日本の役割を増すことが必要である。


 日米安保改定60年 「盾と矛」関係の変質           東京新聞

 現行の日米安全保障条約の署名からきょう19日で60年。自衛隊は専守防衛に徹し、打撃力を米軍に委ねてきた「盾と矛」の関係は、冷戦終結後、自衛隊の役割拡大に伴って変質しつつある。
「日米同盟は、日米両国の平和と安全を確保するに際して不可欠な役割を果たしてきており、今後もその役割を果たし続ける」日米両国の外務防衛担当閣僚は条約署名60年に当たって発表した共同声明で、日米安保体制が果たしてきた役割を強調した。
◆旧条約で米軍駐留継続
 現行安保条約は1960年、旧安保条約を改定したものだ。51年、サンフランシスコ対日講和条約と同時に締結された旧条約は日本の独立回復後も米軍の駐留を認めることが主眼だった。占領軍さながらに日本国内の内乱に米軍が対応する記述がある一方、米軍の日本防衛義務は明記されておらず、独立国としてふさわしくない条約と見られていた。旧条約を結んだ吉田茂首相の退陣後、54年に発足した鳩山一郎内閣から条約改定に向けた動きが始まる。その狙いは米軍撤退に備えて日本の自衛力を増強し、相互防衛的な条約にすることだった。
 しかし、基地使用の制限を恐れた米国側は、日本の自衛力不足を理由に否定的だった。 再び条約改定に臨んだのが安倍晋三首相の祖父、岸信介首相だ。57年、就任4カ月後に訪米し、アイゼンハワー大統領との間で旧条約が「暫定的なものである」ことを確認し、翌58年から安保改定交渉が始まった。そして60年1月19日、日米両政府は現行の安保条約に署名。条約案は5月20日、混乱の中、衆院を通過、30日後の6月19日に自動承認され、岸首相は条約発効を見届けて退陣を表明する。
◆基地提供の義務は重く
 現行の安保条約は戦争放棄と戦力不保持の憲法九条の制約が前提だ。自衛隊は「盾」として専守防衛に徹し、「矛」としての米軍が打撃力を受け持つ関係である。 日本は米軍への施設提供義務、米国は日本防衛義務をそれぞれ負う。非対称ではあるが、ともに義務を負う「双務条約」である。しかし、米国だけが軍事的負担を強いられ、日本はただ乗りしているという「安保ただ乗り論」が米国内では時折、頭をもたげる。米軍への施設提供は日本にとって重い負担であり、ただ乗り論は妥当性を欠くが、米政権は自国の経済財政状況が厳しくなるたびに一層の負担や役割の拡大を求め、日本側が応じてきたのが現実だ。
 日本は条約上の義務のない人件費や光熱水費などを「思いやり予算」として負担し続け、自衛隊は装備を増強し、海外派遣も常態化した。極め付きは歴代内閣が憲法上許されないとしてきた「集団的自衛権の行使」を、安倍内閣の判断で容認したことだろう。自衛隊は長距離巡航ミサイル導入や事実上の空母保有など、憲法上許される「必要最小限度」を超えかねない装備を持ち、憲法解釈の変更で限定的ながら海外で米国とともに戦えるようになった。長く「盾」だった自衛隊は条約改定から60年を経て、米英同盟のようにともに戦う「軍隊」へと変質し、米国の紛争に巻き込まれる危険性は確実に高まっている。
 日米安保は戦後日本の平和と繁栄の基礎となり、ソ連を仮想敵とした冷戦終結後も、アジア太平洋の安全保障という新たな役割を与えられ、続いてきた。ただ、安保条約は日米だけでなく日本と近隣諸国との関係、日本の政治や防衛政策、さらには憲法の在り方にも影響を与えてきた。無批判に継続するのではなく、常に検証する必要があるだろう。在日米軍は適正規模なのか、一地域に過重な負担を押しつけていないか。在日米軍専用施設の70%が集中する沖縄の現状を放置して日米安保の円滑な運用は難しい。思いやり予算は、5年ごとの改定が2020年度に行われるが、米側は4増を求めているとされる。米軍駐留に伴う日本側の総経費は年間8000億円近くに上り、これ以上の負担増は妥当なのか。安倍内閣が高額な米国製武器の購入を増やしていることも問題だ。
◆たゆまぬ見直しが必要
 アジアの安全保障環境は、中国の軍事力増強や北朝鮮による核・ミサイル開発など依然厳しい。日米安保体制が、警察力としての米軍の存在を支え、地域の安定に一定の役割を果たしてきた。 かと言って、日米安保が軍拡競争の誘因となり「安全保障のジレンマ」に陥っては本末転倒だ。
 同盟」関係はよくガーデニング(庭造り)に例えられる。手入れを怠れば荒れるという意味だ。日米安保体制は今のままでいいのか、新しい時代に対応し、平和憲法の理念を実現するためにも、たゆまぬ見直しが必要である


 日米安保60年 追従ばかりでは危うい                北海道新聞

 現行の日米安全保障条約の署名から、きょうで60年を迎えた。
 戦後日本は米国と経済、安保両面で協調することによって発展を遂げてきた。だがいま、安保協力の中身と、取り巻く国際情勢は、冷戦期から大きく変質している。
 その一つは、安倍晋三政権が自衛隊と米軍の一体化を加速させていることだ。
 今月には米軍との連携を事実上の目的にした自衛隊の中東派遣に、国会の熟議もなく踏み切った。
 憲法は海外での武力行使を禁じている。専守防衛を逸脱しかねない行き過ぎた対米追従は危うい。
 米国はトランプ政権の下で自国第一主義に走っている。「世界の警察官」の立場から降りようとし、同盟国には見返りを求めている。安保条約の趣旨は、日本が米国の言いなりになることではない。中国が軍事面でも台頭し、テロも多極化する中、日本が平和国家の道をどう歩み続けるのか。対米連携とともに、多国間の協調に軸足を置いた外交・安保に力を注ぐのが取るべき道だろう。今年直面するのが米軍駐留経費を巡る特別協定の改定交渉だ。トランプ政権が11月の大統領選を見据え、日本に一層の負担増を求めてくることは間違いない。本来は米側が支払うべき人件費などについて、日本側が負担する「思いやり予算」は本年度、1974億円に上る。日本の負担割合は同盟国の中で突出して高く、すでに8割を超えているとされる。にもかかわらず、米側は昨年夏、瀬踏みをするかのように現行の5倍の負担を求めてきたという。

 論外である。
 米軍は中国や北朝鮮、ロシアなどの脅威を見据え、在日米軍基地をアジア・太平洋地域の戦略拠点としている。こうした米側の利益を踏まえ、一方的な主張に対しては明確に反論すべきだ。日米安保によって、沖縄には国内の米軍専用施設の7割が集中する。戦後はまだ終わっていない。県民が反対する中、安倍政権が工事を強行する、米軍普天間飛行場の辺野古移設がその象徴だ。米海兵隊の輸送機オスプレイの訓練が今週から道内で実施される。沖縄の負担軽減を名目に、日本全体にその負担がじわじわ広がっていることも見過ごせない。米軍の特権的な法的地位を定めた日米地位協定は一度も改定されていない。米国に追従する前に安倍政権がなすべき懸案は山積している。

 
日米安保改定60年 沖縄のトゲ抜く責務ある         琉球新報

  現行の日米安全保障条約が署名されて60年を迎えた。米国が日本を守り、日本は基地を提供して米軍の活動を支える協力関係が定められた。しかし、提供された在日米軍専用施設面積の7割は沖縄に集中する。米軍による事件事故、騒音や土壌汚染といった環境破壊などの過重な負担は「安保のトゲ」として県民に突き刺さり続けている。
 日米安保を維持したいならば、「沖縄の負担軽減」は国の責務であるはずだ。しかし政府は日米同盟を優先し、沖縄県民の反対を押し切って米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古への新たな基地建設を進める。明らかに矛盾している。
 政府は沖縄の過重な負担を軽減することを米国と真剣に交渉すべきだ。さらに事件事故や環境問題などが起きても日本の捜査や司法手続きが制約され、米側の運用が優先される日米地位協定を改定するよう強く求める。
 日米安保の旧条約は敗戦後、日本が「独立」し、沖縄などが切り離されて米施政権下に置かれた1952年に発効した。日本は米国の同盟国となり、米軍の駐留を認めた。60年に改定された現条約は第5条で米国に日本防衛の義務を課し、第6条で日本に米軍への基地提供を義務付けた。その後の日本は「軽武装・経済重視」の政策を取り、高度経済成長に向かう。
 しかし沖縄は日米安保条約が結ばれた際は米施政権下にあり、国会に代表も送れず、条約の批准に何の発言権もなかった。高度成長の恩恵もなかった。
 県外で激しくなった反米軍基地運動を受けて50年代に山梨や岐阜から沖縄に海兵隊の第3海兵師団が移り、69年には海兵航空群が山口県の岩国基地から普天間に移った。本土の負担軽減の策として、米施政権下で核兵器も配備でき、米国人の優先的扱いが可能な沖縄に基地が移転されたのである。
 日本復帰して現在に至るまで、沖縄の負担は変わっていない。東西冷戦の終結に伴い、主に旧ソ連に対抗する軍事同盟だった日米安保は、アジア太平洋地域の安定装置として再定義され、現在は中国への対処を強めている。
 日米を取り巻く安全保障環境は変化しているのに、日米安保のひずみを引き受けるのは沖縄だけという状況が許されるのか。
 この状況は日本国民の、日米安保の恩恵は享受したいが米軍施設は嫌だという「Not In My Back Yard」(うちの裏庭にはご免)の論理に基づいている。無意識の「構造的差別」を日本国民が自覚しない限り、沖縄のトゲは抜けない。

 故翁長雄志知事は「沖縄が日本に甘えているのか、日本が沖縄に甘えているのか」と問うた。政府は新たな負担となる辺野古新基地建設をやめ、米国と沖縄の負担軽減について話し合うべきだ。