《社説》 春闘と労組 不屈の決意で臨まねば

2024年1月25日 中日新聞

 連合の芳野友子会長が24日、経団連主催の「労使フォーラム」で賃上げ加速を訴え、2024年春闘が事実上始まった。

 今春闘の最大テーマは被雇用者の約7割を占める中小企業の賃上げをいかに後押しするか。中小への賃上げ波及が春闘の成否を握る最優先課題だ。労組側は不屈の決意で交渉に臨んでほしい。

 訪中のため欠席した経団連の十倉雅和会長はビデオメッセージで「物価上昇に負けない賃上げを目指すことは社会的義務だ」と呼びかけた。

 昨年、経済界の一部には「労組の要求は高い」との意見があったが、今年は腰の重かった大企業経営者の態度が様変わり。賃上げ実施が経営側の共通認識になっており、大幅賃上げに向けた環境は昨年以上に整ったと言える。

 異例とも言える追い風を受ける労組側は目標の5%以上の賃上げに向け強気の姿勢を貫くべきだ。

 ただ、気がかりなのは中小企業の姿勢だ。調査会社の東京商工リサーチが昨年12月に実施した調査では、24年春闘の賃上げ率が前年を上回ると答えた中小企業は1割にとどまった。

 原材料価格が高騰する中、価格転嫁の困難さが賃上げの足かせとなっており、取引先である大企業が納入価格の値上げを受け入れない限り、中小企業の賃上げの原資は確保できない。

 公正取引委員会は価格転嫁に不当に応じない企業は独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たるとして厳正対処の方針。芳野会長も「中小は堂々と価格転嫁を要求すべきだ」と主張する。

 しかし、掛け声だけでは劇的な効果が望めないのが現実だ。中小労組は価格転嫁問題を軸に据え、賃上げを勝ち取れるよう強い態度で交渉に臨む必要がある。

 連合が5%以上の賃上げを達成したのは1991年が最後。その後は労働運動の低調ぶりが目立ち春闘の形骸化も指摘される。

 しかし、働く人々の声が届かなければ暮らしの向上は望めない。今春闘こそ各労組は連帯し、社会全体に行き渡る「公平な賃上げ」を勝ち取ることを期待したい。