《社説》 臨時国会閉会 政権チェック果たせず

2023年12月14日 朝日新聞

 内閣不信任決議案は与党の「数の力」で否決されたが、岸田首相は「信任」されたばかりの内閣の要である官房長官を含む、4人の重要閣僚をきょう交代させるのだという。本当は信任に値する内閣ではなかったと、自ら認めるようなものだ。

 首相が9月の内閣改造後、初めて臨んだ臨時国会が終わった。会期中、副大臣2人、政務官1人が不祥事で辞任。派閥の政治資金パーティーを利用して、裏金づくりをしていた疑いが浮上した安倍派の閣僚や副大臣は、閉会直後に一掃せざるをえなくなった。

 こんな態勢の政府や与党が提出した、問題含みの補正予算案や法案を、あっさりと成立させた国会は、チェック機能を果たしたとは言えない。

 補正予算は、財政法が定める「緊要な経費」とは認め難い項目にも兆円単位をつぎ込み、13兆円余りに水膨れした。しかも、財源の7割は借金頼み。だが、首相らから説得力のある説明はないまま、審議は短時日で終わり、野党の日本維新の会と国民民主党も賛成し、問題点が修正されることはなかった。

 大学の教職員らから、「学問の自由」「大学の自治」を脅かすと懸念の声があがった改正国立大学法人法も、疑念を解消できぬまま成立した。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済のための特例法は、最終的に多くの野党の賛同を得たが、当事者らが求めた教団財産の保全規定は盛り込まれず、実効性に疑問を残した。

 教団をめぐっては、首相が自民党政調会長だった19年にギングリッチ元米下院議長と面会した際、友好団体のトップが一緒にいたことが明らかになったが、首相は同席者については知らぬ存ぜぬの一点張り。教団とは「関係ない」と繰り返すだけの姿からは、政治家が利用され、被害の拡大につながったかもしれないという自省はうかがえない。

 国会終盤では、自民党の派閥のパーティーをめぐる政治資金問題が焦点となったが、首相も疑惑を指摘された閣僚も、捜査への影響などを理由に、「答えは控える」を連発した。これでは、国民の政治不信は深まる一方だ。

 国会議員が事実上、自由に使っている月100万円の調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開は、今回も見送られた。足掛け3年にわたる、たなざらしである。パーティーも含めた、政治資金の抜本的な透明化は、来年の通常国会で必ず実現されねばならない。政治への信頼回復は、与野党共通の重い責務である。