《論説》 米軍オスプレイ墜落 政府は毅然と対処せよ

2023年12月2日 山陰中央新報

 恐れていた事態が、現実になった。

 国内外で事故やトラブルが相次ぐ米軍輸送機オスプレイが鹿児島県・屋久島沖に墜落し、一部搭乗員の死亡が確認された。国内では初の死亡事故だ。陸上なら大惨事の恐れもあった。

 事故機は横田基地(東京)所属だが、オスプレイは米軍普天間飛行場(沖縄)にも配備されており、陸上自衛隊も導入している。各配備地や飛来地などの自治体、住民に与えた不安は極めて大きい。米軍は直ちに飛行を停止し、原因の徹底究明と再発防止に全力を挙げなければならない。日本政府には、それを確実に実行させ、情報を国民に開示する責任がある。

 ところがである。当初は墜落を「不時着水」とごまかすような説明をし、飛行停止の要請も翌日にずれ込んだ。米軍に対する腰が引けた対応と言わざるを得ない。もっと毅然(きぜん)と対処し、国民の安全を確保すべきだ。

 事故を起こしたのは空軍仕様のCV22で、8人が搭乗していた。米軍岩国基地(山口)から米軍嘉手納基地(沖縄)に向かう予定だったが、屋久島沖で機影がレーダーから消失した。

 海上で機体の残骸多数や無人の救命ボートが見つかった。「片方のエンジンから出火し、墜落した」「沖合から煙が上がった」など複数の目撃証言もあった。これだけの状況がそろっていたのに、宮沢博行防衛副大臣は「米側の説明ではパイロットは最後まで(操縦を)頑張っていた」として「不時着水」と説明したのである。

 翌日の国会で自民党議員からただされ、木原稔防衛相がようやく「墜落」と答弁した。米側の表現が変わったという。自ら事実認定しようとしない姿勢にあきれるし、事故を矮小(わいしょう)化しようとする意図すら疑われる。

 事故直後、玉城デニー沖縄県知事は「事故原因究明まで米軍オスプレイの飛行停止を求める」と発言した。住宅地に囲まれた危険な普天間飛行場を抱える自治体のトップとして当然の反応だ。

 これに対し、岸田文雄首相は飛行停止要請について「事故の実態を確認した上で考えるべき課題」と煮え切らない態度だった。この温度差が国と県の今の対立につながっているのではないか。

 結局、要請は翌日になり、事故から要請までに少なくとも海兵隊仕様のMV22が十数回、普天間を離着陸したという。政府は早急に飛行停止を実現させねばならない。

 オスプレイは開発段階から墜落事故が相次いだ。特段事故率が高いわけではないとの指摘もあるが、不安な米軍機の象徴的存在だった。2016年には沖縄県名護市沿岸部に普天間所属のMV22が不時着、大破し、搭乗員が負傷した。

 今年も海外で死亡事故が発生。国内でも9~10月に九州・沖縄の空港にMV22が相次いで緊急着陸した。米軍は「異常を知らせる警告が出た」と言うだけで、詳細は説明しないままだ。

 陸自は木更津駐屯地(千葉)に暫定配備している陸自仕様のV22の飛行を取りやめるが、政府が言うように「事故状況が明らかになるまで当面の間」では済まされない。

 仕様は事故機とは異なっていても、基本構造は同じだ。総点検で安全を確認し、国民に十分な説明をするまで飛行させてはならない。