《社説》 オスプレイ飛行継続 主権国家の体をなさず

2023年12月1日 琉球新報

 主権国家としての体をなしていないのではないか。米国におもねるだけでは国民の生命、財産を守ることはできない。米国への追従をやめ、欠陥機の即時撤退を突き付けるべきだ。

 米軍嘉手納基地に向かっていた横田基地所属の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが鹿児島県屋久島沖に墜落したにもかかわらず、普天間飛行場所属のMV22オスプレイは飛行を続けている。

 日本国内でのオスプレイ墜落で初めて乗員の死者が出たのだ。事故原因が不明なまま飛行を続けるのは異常であり、到底納得できない。米軍は事故の重大性を認識しているのか。30日午後も墜落現場で行方不明となった乗員の捜索が続いているのである。

 日本政府の対応も弱腰と言わざるを得ない。木原稔防衛相は安全が確認されてから飛行するよう米側に要請したという。このような曖昧な要請では効果は望めない。欠陥が繰り返し指摘されているオスプレイに関しては、安全は確認しようがない。

 防衛省によると、事故発生後から30日午前7時までに、米軍普天間飛行場にオスプレイが計14回離着陸していたという。県民の命を軽視しているとしか思えない。普天間を含む国内の米軍基地にあるオスプレイの即時全面飛行停止を突き付けるべきだ。

 不可解なことは他にもある。宮沢博行防衛副大臣が29日の会見で、屋久島沖での米空軍CV22オスプレイ墜落事故について「不時着水」との見解を示した。米軍から「最後までパイロットが頑張ってコントロールしていた」との説明があったからだというのが、その理由だ。現場で捜索に当たっている海上保安庁の広報文も「墜落」から「不時着水」に改められた。

 30日になって木原防衛相が「墜落」と修正した。それも、米軍が説明を修正したからという。日本の主体性はどこにあるのか。米軍の言い分を検証せずにおうむ返しするだけなら、主権国家とは言えない。この国のリーダーたちは一体どこを見て仕事をしているのだろうか。

 宮沢副大臣が説明したように操縦士がコントロールしていたのなら死者が出る悲惨な事故は避けられたはずだ。何らかの機体のトラブルなどによって制御不能に陥り、墜落したと考えるのが普通だ。

 機体の一部は激しく損壊しており、「不時着水」ではなく、制御できないまま海面に激しく衝突したことが想像できる。「機体が突然くるくると回転し始め、水柱が上がるまであっという間だった」との目撃証言もある。

 米側に配慮し、事故を矮小(わいしょう)化しようという思惑があったのなら許されない。物的証拠と目撃証言もある。国民に正確に情報を伝えるべきだ。

 主権に基づいて事故に対処し、オスプレイ撤退を要求することが国民の生命と財産を守るための当然の責務だ。