《社説》 国連総会と核軍縮 「使ってはならぬ」を行動に

2023年9月22日 毎日新聞

 核兵器の使用を防ぎ、軍縮の流れを取り戻すにはどうすればいいか。真剣な議論が求められる。

 国連総会で首脳や閣僚による一般討論演説が始まった。ロシアのウクライナ侵攻や気候変動などと並んで際立つのが、核軍縮や不拡散への言及である。

 国連のグテレス事務総長は核軍拡が「我々を危険にさらしている」と指摘し、チェコのパベル大統領は北朝鮮とイランによる「無謀な核の緊張増大」を非難した。

 グアテマラのジャマテイ大統領は核保有国に「完全な核軍縮の履行」を迫り、カザフスタンのトカエフ大統領は「2045年までの核なき世界の実現」を訴えた。

 共通するのは、高まる核の脅威への懸念だ。ロシアのプーチン大統領は核の脅しを繰り返し、隣国ベラルーシに核兵器を配備した。

 米国や中国は核戦力を強め、北朝鮮は核・ミサイル能力を高めている。イランは核開発に再び着手し、拡散の恐れも強まっている。

 国際NPOによると、核保有国が昨年、核兵器に投じた費用は829億ドル(約12兆円)に達し、前年より3%増えたという。新たな製造や開発が進む。

 保有国は「核を使ってはならない」と言いながら、依存度を高めているのは疑いようがない。憂慮すべき事態に歯止めをかける必要がある。

 グテレス事務総長が今夏に発表した「新たな平和への課題」は、「核兵器の廃絶」を第一の課題に挙げている。

 全人類に危害が及ぶという危機意識からだ。「不使用」の約束や、破滅的な戦争を避けるための予防外交を保有国に促している。

 こうした提案に耳を傾けるべきだ。「核には核で」という抑止論にばかり固執していては、打開の道は開けない。

 今秋、米中露の間で首脳外交が展開される見通しだ。これに合わせて核の使用を回避する方策を講じ、軍備管理に向けた対話を行うこともできるはずだ。

 核軍縮の輪は少しずつだが広がっている。核実験全面禁止条約(CTBT)の発効に向けて今年、新たにソマリアが署名し、ソロモン諸島とスリランカが批准した。非核を希求する取り組みを国際社会は後押ししなければならない。