《社説》 ロ朝首脳会談 軍事協力拡大許されぬ

2023年9月15日 東京新聞

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記がロシアを訪問し、プーチン大統領と会談した。武器取引や軍事技術の支援が話し合われたとみられるが、ウクライナや北東アジアの情勢を悪化させる軍事協力の拡大が許されてはならない。

 約4年半ぶりの会談はロシアが誇る宇宙基地で行われた。プーチン氏は北朝鮮のロケット開発を支援する意向を表明。正恩氏はウクライナ侵攻を支持した。

 北朝鮮メディアは安全保障分野の「重大な問題」を協議し、「満足する合意と見解の一致」に達したと報じた。ウクライナ侵攻の長期化で武器・弾薬が不足するロシアは砲弾などの提供を、北朝鮮は弾道ミサイルと同じ技術の人工衛星運搬用ロケットなど最先端技術の支援をそれぞれ求め、意見が接近した可能性が高い。

 ウクライナ侵攻以降、国際的に孤立するロシアと北朝鮮は関係を深めてきた。両国間の武器取引を巡っては、北朝鮮が昨年11月、ロシアの民間軍事会社ワグネルに対し、歩兵用のロケット砲やミサイルを納入したことが明らかになっている。

 国連安全保障理事会は複数の決議で、全ての加盟国に北朝鮮との武器取引や同国への軍事技術の支援を禁じる。ロシアも一連の決議に賛成票を入れている。決議に違反する行為を進んで行おうとするロシアに、安保理常任理事国の資格はあるのか。

 加えて、ロシアのラブロフ外相は今後、北朝鮮に対する安保理の制裁決議を認めない考えまで明言した。到底容認できない。

 北朝鮮は首脳会談直前に、日本海に向けて短距離弾道ミサイルを発射した。かつては北朝鮮の核武装に反対していたロシアだが、プーチン氏が正恩氏に懸念を示したという情報は伝わっていない。なりふり構わず北朝鮮にすり寄る姿勢からロシアの苦境が透ける。

 両国の軍事協力の拡大は、ウクライナ侵攻を長引かせ、北朝鮮による核の脅威増大につながりかねない。日本政府は国際社会とともにロ朝両国に対し、国際規範の順守を求めていかねばならない。