《社説》 中国電の中間貯蔵 リスクの説明が不可欠だ

2023年8月8日 山陽新聞

 原子力発電所の新設が計画されてきた山口県上関町=地図=に、中国電力が使用済み核燃料の中間貯蔵施設を造る検討を始めた。関西電力との共同開発を前提に地質などの調査を町に申し入れた。

 建設が実現すれば青森県むつ市に続き全国2カ所目となる。中国電と関電は施設の安全性とリスクを丁寧に説明しなければならない。

 中間貯蔵施設は原発から出る使用済み燃料を再処理するまでの間、一時保管する施設だ。中国電は、熱を帯びた燃料をキャスクと呼ばれる空冷式の金属容器で貯蔵する「乾式」の手法を想定している。電気で水を循環させて冷やすプール(「湿式」)より安全性が高いとされる。

 上関原発は瀬戸内海の長島に2基を造る計画だが、東京電力福島第1原発事故を受けて工事が中断したまま、建設の見通しが立っていない。このため町が原発に代わる地域振興策を中国電側に要望していた。

 上関町では原発を巡って町民の賛否が割れ、対立が30年以上に及ぶ。根強い反対論がある一方、人口減と財政悪化に苦しむ中で原発関連事業がもたらす交付金への期待は大きい。今回の動きで分断が一層深まる懸念はあろう。

 使用済み燃料は全国的に保管の限界に近づいている。国は再処理して利用する「核燃料サイクル」を掲げるものの、肝心の再処理工場(青森県六ケ所村)が30年前の着工からトラブル続きで未完成のままだ。再処理後に残る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を埋める「最終処分地」もまだ決まっていない。

 その間、行き場のない使用済み燃料が全国の原発内のプールなどにたまり続けてきた。既に全体の容量の8割近くが埋まり、電力各社は対応を迫られている。

 中国電は今回、建設コストの負担を減らすため、関電に異例とも言える共同開発を打診したという。福井県内に3原発を抱える関電は、原発内のプールが満杯となるまで約5~7年しかない状況にある。同県との間で今年末までに中間貯蔵施設を県外に確保すると約束しているが、めどを付けられていない。

 上関町側は今後、調査を受け入れるか話し合いを進める。中国電と関電は、施設の安全性のみを強調するのではなく、どんなリスクが想定されるのかについてしっかり説明することが欠かせない。

 地震や津波といった自然災害だけでなく、核テロに対する備えは万全なのか。さまざまな懸念が指摘される。こうした住民らの不安や疑問に応える責務がある。