《記事》 憲法記念日「新たな戦前 避ける」
  護憲派集会に2万5000人 改憲派集会 首相、自民案「早期実現を」

2023年5月4日 東京新聞 朝刊1面

 日本国憲法は三日、施行から76年の憲法記念日を迎えた。岸田政権が敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有など安全保障政策を大きく転換する中、各地で集会が開かれ、護憲派は「憲法を無視している」と平和主義の形骸化を批判。対する岸田文雄首相(自民党総裁)は改憲派へのビデオメッセージで「憲法改正に向けた機運をこれまで以上に高めることが重要だ」と強調した。

 護憲派は東京都江東区の有明防災公園で大規模集会を開催し、二万五千人(主催者発表)が参加した。

 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」共同代表の高田健さんは、「岸田政権は専守防衛を放棄し、敵基地攻撃能力保有など戦争準備をしている。任期中に改憲すると言っているが、絶対に止めないといけない」とアピール。室蘭工業大の清末愛砂教授(憲法学)は、敵基地攻撃能力を盛り込んだ安保関連三文書について「憲法を無視し、解釈改憲で大軍拡の道を開いた。『新たな戦前』を避けるため、つながりの輪を広げよう」と呼びかけた。

 一方、首相は東京都内で開かれた改憲派の集会に寄せたメッセージで、自民党が掲げる(1)自衛隊の明記(2)緊急事態条項(3)教育の充実(4)参院「合区」解消-の改憲四項目に触れて「いずれも極めて現代的な早期の実現が求められる課題」と訴えた。

 自衛隊の明記に関しては「力による一方的な現状変更の試みの深刻化や、北朝鮮の度重なる弾道ミサイルの発射など、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、自衛隊を憲法にしっかりと位置付けることは極めて重要なことだ」と主張した。

 

(メモ)
 憲法記念日 祝日法では、1974年5月3日の日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する日とされた。憲法が公布された11月3日は「憲法で戦争放棄という重大な宣言をし、国際的にも文化的意義を持つ重要な日」として「文化の日」と名付けられた。

 護憲派の集会では参加者の高齢化が叫ばれる中、若者の姿もあった。平和主義が揺らぐ現状に何を思うのか。