(社説)低迷する野党 説得力のある政策が不可欠だ

2022年7月14日 読売新聞

 「多弱」のままでは、政権交代の展望が開けないどころか、野党の存在意義までが問われる。125議席が争われた今回の参院選で、野党勢力が獲得した議席は、4割弱の49議席にとどまった。勝敗を左右する32の1人区の多くで、野党間の選挙協力が不調に終わったことや、与党と渡り合える軸となる政党がなかったことが響いたと言えるだろう。

 野党は、政府を厳しく監視するだけでなく、与党ではくみ取れない民意を国政に反映させる、という重要な役割も担っている。野党が低迷し、国会に緊張感が失われると、政治全体の質の低下を招くことになる。政策立案能力を磨いて、現実的な施策を掲げる。地方組織を充実させ、党の基盤を強固にする。そうした地道な取り組みが支持拡大には不可欠だ。

 野党第1党の立憲民主党は、昨年の衆院選に続く敗北で、党勢の退潮を印象づけた。泉代表は「結果を重く受け止めながら、党の立て直しを図っていきたい」と述べ、続投する考えを強調した。立民は「生活安全保障」をキャッチフレーズに掲げ、時限的な消費税減税や年金の追加給付などを訴えたが、財源の裏付けは曖昧だった。現実味の乏しさを有権者に見透かされたと言えよう。

 冷戦終結に伴い、「保守・革新」のイデオロギー対立が消滅し、様々な課題への取り組み方の優劣が問われる時代になっている。立民はそうした状況を踏まえなかったために、党の立ち位置が定まらなかったのではないか。

 人口減少や電力不足、安全保障環境の悪化といった課題にどう対処するのか。あるべき国の将来像を描き、その実現のための道筋や根拠を明確にすべきだ。立民と国民民主党の源流である旧民主党政権は、政治を混乱させ、2012年に下野した。国民の間には今なお失望感が残っている。信頼を回復するには、説得力のある政策を提示する必要がある。

 日本維新の会の躍進は、旧来型の野党に飽き足らない層の期待を集めたからとみられるが、野党第1党の座には至らなかった。党創設に関わった松井代表は辞意を示した。次期代表が求心力を保てるかどうかがカギを握る。

 参院選では、インターネットを積極的に活用した参政党が議席を得た。極端な主張をしている少数政党への支持は、日本を覆う 閉塞へいそく 感を打破できない既成政党に対する不信感の表れではないか。