(社説)敗北した立憲民主 「提案型」の深化欠かせぬ

2022年7月13日 毎日新聞

 参院選では自民党が大勝した一方、立憲民主党は改選前から議席を6減らした。野党第1党の座は維持したものの、昨年の衆院選に続く敗北である。

 泉健太代表は「政権を任せられると認知されなかった」と反省の弁を述べた。敗因の分析と党の立て直しが急務だ。

 まず野党共闘が不調に終わったことが大きい。多くの選挙区で競合し、政権批判票が分散した。深刻なのは選挙戦術の失敗にとどまらない。党への支持がより反映される比例代表で、得票を大きく減らした。地力を高めることが不可欠だ。

 今回の参院選では、従来の対決型から脱却し、「提案型」を掲げた泉路線への評価が問われた。方向性は妥当だったが、支持は広がらなかった。目指す社会像を明示できなかったからではないか。

 新型コロナウイルス禍や物価高を受け、格差是正は取り組まなければならない課題だ。岸田文雄首相の看板政策「新しい資本主義」が成長重視に変質する中、「分配か、成長か」が対立軸になり得るはずだった。泉氏は中長期目標として「公平な税制と再分配で格差と貧困の少ない社会」を掲げていたが、選挙戦で分配政策はかすんだ。もっぱら「岸田インフレ」を強調し、政府の物価高対策を批判することに終始した。景気浮揚策として消費税率引き下げを主張したが、膨張する社会保障費の財源をどう捻出するかを示せなかった。

 ロシアのウクライナ侵攻で外交・防衛政策への関心が高まる中、公約で「着実な安全保障」を掲げたものの、具体論を欠いた。言葉が上滑りした感は否めない。

 野党には本来、政府が踏み込めないような大胆な提言をすることが期待される。いま立憲に求められるのは、実現可能性のある政策を地道に練り上げることだ。少子高齢化が進む中、国民に何を提供し、どのような負担を求めるのか。提案型を深化させるために、政策の全体像を徹底的に議論すべきだ。

 議会制民主主義を機能させるには、政権担当能力のある強い野党の存在が重要だ。立憲は野党第1党としての責任を自覚しなければならない。