(社説)沖縄慰霊の日 戦禍繰り返さぬ誓い再び

2022年6月24日 毎日新聞

 沖縄は23日、慰霊の日を迎えた。太平洋戦争末期の沖縄戦で、組織的な戦闘が終結した日から77年になった。

 3カ月にわたる凄惨(せいさん)な地上戦の末、日本側の犠牲者は18万8000人に及んだ。このうち県出身者は12万人で、県民の4人に1人が亡くなった。

 今年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は、ひとたび戦争が起きれば、軍事施設が真っ先に狙われ、周辺住民は逃げ場を失いかねないことを見せつけた。同じような事態が東アジアで起きることへの懸念が高まっている。

 国土面積の0・6%しかない沖縄に全国の米軍専用施設の7割が集中する。南西諸島には陸上自衛隊の部隊配備が進み、参院選では防衛費増額が議論になっている。

 地元では、再び戦場にならないかという不安が高まり、平和な島への願いが募る。それが、復帰50年を迎えた沖縄の現実の姿ではないか。

 戦没者追悼式は、3年ぶりに首相が出席して開かれ、沖縄市の小学2年生が平和の詩を朗読した。「せんそうがこわいから へいわをつかみたい ずっとポケットにいれてもっておく ぜったいおとさないように」。美術館で沖縄戦の絵を見て感じた戦争の怖さと平和の尊さを表現した。

 戦禍を再び繰り返してはならない。こうした沖縄の思いを国はどれだけ理解しているだろうか。

 ちょうど同じ日、長崎市では自衛隊の護衛艦の進水式があった。岸信夫防衛相は「納期を考慮」「式は大安の日が慣例」と日程が重なった理由を説明している。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設では、埋め立て予定海域に軟弱地盤が見つかっているにもかかわらず、工事が強行されている。戦没者の遺骨が眠る本島南部の土砂も使われる計画で、地元では批判も出ている。

 米軍による事件や事故が起きるたびに日米地位協定の改定を求める声があがるが、政府は取り組む構えを見せない。

 日米安保体制の役割は大きい。だからといって沖縄の過重な負担を放置することは許されない。沖縄の歴史や思いを踏まえ、本土として何をすべきかを考え直す必要がある。