(社説)新たな観光支援 需要喚起を地方経済の再生に

2022年6月21日 読売新聞

 コロナ禍の長期化で観光業は苦境にあえいでいる。新型コロナウイルスの感染抑止に努めながら効果的に需要を喚起し、地域経済の活性化につなげていきたい。

 国土交通省は、全国を対象にした新たな観光支援策を発表した。新型コロナの感染状況を見極め、7月上旬に開始することを目指している。お盆期間を除く8月末まで続けるという。

 支援策は宿泊代金の補助が中心で、補助額は飲食などに使えるクーポン券も合わせて最大1人1日1万1000円となる。隣県などへの旅行に適用する現行の「県民割」より4000円多くなる。

 各都道府県が実施するかどうかを判断する。県内やブロック内の限定ではなく、全国から旅行客を受け入れることになるという。

 新型コロナの感染状況は、ひとまず落ち着いている。東京や大阪など大都市から地方への遠距離旅行を促すのはうなずける。

 2021年の国内旅行者の延べ人数は19年の半分以下に減った。観光業は宿泊、飲食、物販など消費の裾野が広く、地方経済を支えているケースも多い。支援策で着実に後押しすることが重要だ。

 宿泊の補助の上限は5000円だが、新幹線や飛行機など公共交通機関での移動を含む旅行商品は8000円に引き上げる。クーポン券は、平日の利用だと2000円増え、3000円となる。

 旅客の減少に苦しむ鉄道会社や航空各社に配慮したことや、平日利用への誘導で混雑緩和を図る狙いは理解できるが、仕組みがやや複雑になった面もある。

 全国規模で展開された「Go To トラベル」との違いもわかりにくい。国や自治体は丁寧に情報発信する必要がある。

 実施にあたっては、コロナの感染防止の徹底が不可欠だ。利用者には3回のワクチン接種か、検査での陰性の証明を求めるという。各宿泊施設は、消毒など基本的な感染対策も怠らないでほしい。

 感染を抑止しながら、国内旅行を円滑に増やすことができれば、訪日外国人客の受け入れを拡大しやすくなるはずだ。

 政府は、水際対策で停止していた外国人観光客の入国手続きについて、一部を10日から再開した。添乗員付きのパッケージツアー客に限定している。

 円安が進み、訪日客にとっては日本での買い物が割安になっている。円安の利点を生かす意味でも、政府は訪日客のさらなる受け入れを検討すべきだ。