● (社説)女川再稼働に同意/事故の不安除く責務は残る
2020年11月12日 河北新聞
東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に同意する考えを、村井嘉浩宮城県知事がきのう表明した。立地自治体の女川町、石巻市の首長との3者協議を行い、結論を出した。
梶山弘志経済産業相に来週伝えるという。再稼働の前提となる「地元同意」手続きが終わることになる。
東日本大震災で被災した原発の再稼働同意は初めてだ。女川2号機は過酷事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉で、この型でも国内初となる。
河北新報社が3月に行った世論調査で「安全性に不安がある」として6割の県民が再稼働に反対している。他にも避難計画の実効性などに懸念の声が強い。課題が解消されないまま、同意に踏み切ったことは残念でならない。
東北電は安全対策工事が終わる2022年度以降の再稼働を目指す。県にはそれまでに最低限、事故の際の避難道路整備のめどを付け、不安を取り除くことが求められる。
村井知事は県議会が再稼働の賛成請願を採択したのを受け、県内全首長の意見を聴く市町村長会議を9日に開いた上で3者協議に臨んだ。
地元同意の当事者について法的な規定はない。知事は県と立地2市町の3者で十分との考えだ。
ただ前述の世論調査で、3者が適切とする回答は7.6%にすぎない。最も多かったのは「県と県内全ての自治体」で6割に上り、3者に原発から半径30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の5市町(登米市、東松島市、涌谷町、美里町、南三陸町)を加えた範囲としたのが3割だった。
原発事故が起きれば被害は広範囲に及ぶ。風評被害や古里に住めなくなることさえあることは、福島第1原発事故で目の当たりにしている。
立地自治体以外の住民が同意の権利を持ちたいと思うのは当然だ。特に事故の影響が大きいと予想される30キロ圏内の5市町には切実だろう。
市町村長会議は住民の不安を代弁する機会だった。
5市町の首長で再稼働反対を明言したのは1人だけ。会議で懸念を示す複数の声も出たが、知事と2市町長の判断に委ねることになった。
無論、2市町への遠慮があっただろう。しかし、住民の負託を受けた首長のあるべき態度とは言えまい。
日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)は立地する東海村に加え、水戸市など周辺5市からも実質的に了解が必要とする安全協定を締結した例がある。
村井知事も「地元同意の範囲は国が決めるべきだ」と述べている。
震災を教訓に避難計画策定を義務付ける範囲を立地自治体に加え、半径30キロ圏の自治体に広げたのは国自身である。整合性を取るためにも、国は地元同意の範囲を広げる法整備をするべきだ。
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