参院選2019 労組の集票、存在感 低投票率救い 組織力には課題
                      毎日新聞2019727日 東京朝刊

 投票率が48・8%と過去2番目に低かった21日投開票の参院選では、組織票を抱える労組が一定の存在感を示し、立憲民主、国民民主両党の議席獲得に貢献した。ただ、組織力の低下に歯止めがかかったとまでは言えず、課題を残したままだ。【宮島寛】

 両党の比例代表で最も個人名票を集めたのは、国民から立候補した新人、田村麻美氏(43)で26万324票だった。田村氏は、繊維、小売り、サービス系労組などの連合体であるUAゼンセンの候補。UAゼンセンは組合員180万人と国内最大の産業別労組(産別)だが、パートなど非正規従業員も多く、産別への帰属意識が比較的低いとされる。過去の得票は20万票以下のことが多く、連合内での集票力は「2番手グループ」とみられてきた。
 しかし、今回は2016年の前回参院選比32・8%増の過去最高得票をたたき出した。その背景に、政府の進める働き方改革もあるとの指摘がある。正社員と非正規労働者の待遇格差を縮める「同一労働同一賃金」は、まさにパート労働者らの課題。UAゼンセン幹部は「『国政に自分たちの声を届ける人は欠かせない』との訴えが心に響いたようだ」と話す。
 田村氏はイオン出身。創業家一族の岡田克也・元民進党代表もイオン票のとりまとめに汗をかいたという。
 2、3位は自動車総連と電力総連の「民間労組2強」。いずれも国民から擁立し、前回16年よりわずかに減らしたものの、26万票弱を稼いだ。
 一方、立憲から擁立した主に官公労系の5労組(自治労、日教組、JP労組、情報労連、私鉄総連)は、票数は私鉄を除き14〜25%を減らしているが、いずれも10万票以上を獲得。著名人候補を上回り、「組織の固さ」を印象づけた。

 全体に国民候補を立てた労組に比べ、立憲系は票の落ち込みが大きい。

 国民は、選挙前の政党支持率が1%程度と低迷し、比例については「せいぜい2議席」とみられていたことから、各労組が懸命に組織固めを図った。自民党関係者も「国民の3議席確保には労組が一役買った」との見方を示す。一方、立憲は、当初、「比例議席が10以上になるのでは」との観測もあり、「組織が緩んだ」(官公労幹部)事情がある。
 とはいえ、各労組の集票力が目立ったのは、2人に1人も投票所に足を運ばないという状況だ。今回の参院選では立憲は、れいわ新選組に票を食われた格好で比例票は791万票どまり。「枝野旋風」が巻き起こり、比例票が全国で計1108万票を獲得した17年衆院選では、労組は埋没気味だった。地力回復への取り組みがなお求められている。

連合系10労組組織内候補の個人名票
労組     党派 票数       16年比増減 結果
UAゼンセン 国民 26万 324票 32.8%増 当選
自動車総連  国民 25万8507票  3.0%減 当選
電力総連   国民 25万6928票  4.9%減 当選
電機連合   国民 19万2586票 10.8%減 落選
自治労    立憲 15万7848票 14.3%減 当選
日教組    立憲 14万8309票 16.1%減 当選
JP労組   立憲 14万4751票 24.5%減 当選
JAM    国民 14万3467票 26.9%増 落選
情報労連   立憲 14万3472票 16.3%減 当選
私鉄総連   立憲 10万4339票  2.1%増 当選