●(社説)民泊新法1年 住民との共存が大事だ
2019年06月24日 北海道新聞
一般の住宅に旅行者を有料で泊める「民泊」を解禁した住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行から1年がたった。道内の届け出数は2293件に上り、東京都、大阪府に次いで都道府県別では3番目に多い。
大人数で連泊する外国人観光客らに好まれる民泊は、交流人口を拡大し、地方経済を活性化させる可能性を秘める。半面、宿泊者とのトラブルを懸念し、民泊の普及に警戒感を抱く地域住民がいまだ少なくないことも事実だ。自治体と事業者が問題意識を共有し、宿泊者と地域住民の双方が安心して共存できる仕組みづくりを進めてもらいたい。
市町村別では、道内届け出数全体の8割に当たる1829件を札幌市が占めた。
民泊のタイプ別では、家主が住んでいない不在型が1918件と大半を占め、家主が住みながら貸す居住型が375件にとどまる。近年は訪日外国人客の急増で、特に夏の観光シーズンにおけるホテルの客室不足が顕著だ。都市部のマンションの空き室などを活用する不在型の民泊は、ホテルの代替機能を果たし、空き家対策につながる利点もある。
ただ、不在型が9割を占める札幌市では新法施行後、騒音、無断駐車、ごみ出しなどに関する市民の苦情が175件寄せられた。周辺住民にとっては「トラブルの温床」とのイメージが拭いきれないのが現実だろう。
これを変えるには、行政の適切な指導で事業者に基本ルールを徹底させるとともに、事業者も情報をこまめに提供して住民に安心感を与えることが求められる。
20事業者が加盟する函館観光・民泊推進協会は普段から近隣住民との意思疎通に努め、これまで目立った苦情はないという。
各地域の事業者が連携し、こうした成功事例を共有していく仕組みがあってもよいだろう。
一方、居住型の民泊には、道民と遠来の観光客をつなぐ拠点としての可能性に期待したい。
宿泊施設が少ない地方の町村は滞在型観光が成立しにくかったが、民泊の利用を通じ、地域の風土や産業に触れ、住民との交流を楽しむ外国人客が増えている。
訪日客の関心は、ブランド品などの買い物から、自然・文化などの体験へと移行している。農作業や温泉入浴、地域の食文化など北海道ならではの体験を提供できる民泊のあり方を模索したい。
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