(社説)辺野古移設計画の破綻は明らかだ 
                     2019年2月23日
   朝日新聞

 安倍政権がごり押しする「唯一の解決策」の破綻(はたん)は、もはや明らかだ。沖縄県の米軍普天間飛行場の辺野古移設計画である。「マヨネーズ並み」といわれる軟弱地盤の対策について、防衛省が検討中の改良工事の詳細が、県の文書で判明した。
 まだ埋め立てが始まっていない大浦湾側の6割にあたる65・4ヘクタールに、砂の杭7万6699本を打ち込む。使う砂の量は東京ドームの約5・25個分。県によれば、県内の砂利採取量の数年分に匹敵するという。最も深い所は、水深30メートルの海底の下に、60メートルの軟弱地盤の層があり、計90メートルに達する。菅官房長官は「一般的で施工実績が豊富な工法で対応は可能」というが、岩屋防衛相は国会で日本企業の施工実績を水面下70メートルまでと紹介した。前例のない難工事になるのではないか。
 貴重なサンゴ類など環境への影響を考えれば、再度の環境影響評価も必要だろう。将来の滑走路の地盤沈下の可能性や、地震、高潮対策も考えなければならない。
驚くのは、政府が改良工事にかかる工期や費用の見通しを一切、示していないことだ。安倍首相は1月末の国会で「現時点で確たることを申し上げるのは困難」と述べた。無責任きわまりない。工期や費用の見通しのない公共工事を進めることなど許されるはずがない。地盤改良工事には設計計画の変更が必要だが、玉城デニー知事は申請を認めない意向だ。繰り返し示された「辺野古ノー」の民意に反し、移設を進めることは政治的にも無理だろう。軟弱地盤対策で工事が長期化すれば、その間、普天間は動かず、基地の固定化につながる。普天間の一刻も早い危険性除去にも反しており、政府が掲げる大義名分は通らない。14年2月に首相が県に約束した「普天間の5年以内の運用停止」は今月、期限を迎えた。当時の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が埋め立て承認にあたって政府に求めたものだが、空手形に終わった。この間、政府は軟弱地盤の存在を知りながら公にせず、浅瀬での土砂投入を先行して、既成事実を積み重ねてきた。あす行われる沖縄の県民投票の結果さえ無視する構えだ。
 だが、現行計画の行き詰まりが明らかになった今、政府に求められるのは、工事を停止し、米国政府と代替案を探る協議を始めることだ。強引な手法が反発を招き、さらに問題をこじらせる。そんな悪循環から抜け出すべき時である。

(社説)辺野古沖に杭7.7万本 工期も工費も過大になる
                             2019年2月23日    毎日新聞
 

 沖縄県民投票の対象となっている辺野古埋め立て工事の驚くべき実態が明らかになった。海底の軟弱地盤が予想以上に深刻で、地盤改良に膨大な時間と費用を要するという。
 軟弱地盤の存在は2015年のボーリング調査で判明しながら、政府は調査中を理由に詳細を公表してこなかった。玉城デニー知事が埋め立て承認を取り消したのに対抗する行政手続きの中で、ようやく地盤改良工事の検討データを県側に示した。
米軍普天間飛行場の辺野古移設に伴う埋め立て面積は約160ヘクタールで、航空機の離着陸に耐えられる強固な地盤が必要になる。政府は辺野古南側の浅瀬部分から埋め立ての土砂投入を進めている。問題になっているのは水深が増す東側だ。
 県が明らかにした政府のデータによると、地盤改良を要する面積は65・4ヘクタールで、東側の埋め立て予定面積112ヘクタールの約6割を占める。そこに鋼管を使い7万6699本の砂の杭(くい)を打ち込む。必要な砂の量650・9万立方メートルは東京ドーム5・25杯分に当たる。沖縄県内の砂利採取量の数年分になる量を調達するめどが立っているとは思えない。
 そもそも技術的に可能なのだろうか。県が政府に提出した意見書によると、従来の工法では水深70メートルが限界であり、最深部が90メートルにもなる軟弱地盤での施工例はないとされる。
政府は「一般的で施工実績が豊富な工法で対応が可能」と言うが、難工事になるのは間違いない。
 仮に技術的に可能だとしても工期が大幅に延びるのは避けられない。 現行計画では滑走路や桟橋などの施設整備も含め完成は22年度以降とされている。もともと埋め立てだけで5年はかかる計画なので、これ自体がすでに破綻している。 そこに大規模な地盤改良工事が加わる。環境アセスメントからやり直さなければならない。地盤改良に5年と見積もった県の試算では完成までに13年かかる。 そうなれば、普天間飛行場の早期返還のためと言ってきた政府の主張の根拠が崩れかねない。 2400億円とされてきた工費も2兆円以上に膨らむと県はみる。その全額を日本が負担する。
 技術的にも費用の面でも辺野古移設は非現実的になっている。