米軍普天間飛行場の辺野古移設計画が大幅に長期化するのが確実となった。埋め立て予定区域の軟弱地盤改良工事などに、10年以上かかるとの見通しを防衛省が近く示す。
政府はこれまで、移設の実現時期を2022年度以降としていた。埋め立て完了後の施設整備に3年はかかることから、移設が実現するとしても30年代以降に大きく遠のく。
地盤改良工事について防衛省は7万7000本もの砂の杭(くい)を打ち込む工法を検討しているが、全体の工期の見積もりは示していなかった。今後、土木工学などの専門家による「技術検討会」に諮ってお墨付きを得たうえで、沖縄県に辺野古埋め立て工事の設計変更を申請する方針だ。
しかし、海面から最深部まで90メートルに及ぶ軟弱地盤の施工例はなく、完成後の地盤沈下対策を含め本当に実現可能なのか疑問視されている。
仮に技術的に可能であったとしても、政治的なハードルは極めて高い。沖縄県民は今年2月の県民投票や、2度にわたる知事選、近年の国政選挙で「辺野古ノー」の明確な意思を繰り返し示してきた。
軟弱地盤の存在は14~16年のボーリング調査で判明していたのに、政府が公式に認めたのは今年に入ってからだ。不都合な情報を隠し、埋め立ての既成事実化を優先する不誠実な姿勢が県との溝を深めている。
沖縄県の玉城デニー知事が設計変更を承認する見通しはなく、国と県の裁判闘争にもつれ込んで改良工事の着工が遅れる事態も想定される。30年代以降に辺野古移設が実現する保証など、どこにもない。
普天間飛行場の「5?7年以内の返還」に日米が合意してから既に23年が経過した。さらに10年以上となれば事実上の固定化だ。
政府が「一日も早い返還実現のため」として工事を強行してきた根拠は崩れている。現行計画はもはや非現実的だと言わざるを得ない。
日米間で修正を重ねて合意した計画を見直すのは政府にとって重い決断となる。だが、このまま辺野古移設に固執している間に重大な事件や事故が起きれば、日米同盟への不信感が沖縄に広がりかねない。
沖縄の基地負担を軽減する原点に立ち返り、県や米側との協議を仕切り直すべき時である。