この国に「イージス・アショア」は要らない(2)
 <候補地・秋田>
配備反対闘争の現状
  明るみに出た「新屋ありき」のデタラメ防衛省調査
▽こうした勢下で、政府は「新屋ありき」の配備計画を強引に進めようとしましたが、月に防衛省が発表した「イージス・アショアの配備に ついて」と題する調査報告書の内容があまりにもズサンだったことが暴露され、情勢は急激に変化します。
▽「適地は新屋」の既成事実化を目論んだ報告書は、調査した青森・秋田・山形3県の日本海側国有地19カ所のうち「か所は周囲にレーダー 遮蔽物となる山があって不適」としていました。しかしその根拠に、標高尺度を拡大し山の起伏を強調している「Google Earth」をそのまま用いたために、場所によっては仰角を実際の3.5倍に表示するという信じがたいミスを犯していたのです。この誤りを発見しスクープしたのも「秋田魁新報」でした。さらに他のカ所で不適理由とされた「津波被害の可能性」についても、新屋演習場では一切触れず、後に「津波浸水域に含まれる」と認め修正するデタラメさでした。
▽加えて、住民説明会の席上で防衛省職員が居眠りをしていた事実も発覚。一連の不祥事に防衛省の「単純ミス、不注意」との弁解も通用せず、近隣住民のみならず県民全体に「新屋ありきの謀略」との印象を与え、激しい不信と怒りを招く結果になりました。この事件を契機に曖昧だった県知事・秋田市長や自民党県議団の姿勢も硬化し、防衛省に「新屋ありきではなく、ゼロベースでの再調査」を求める流れが一気に出来上がりました。
▽かくして、防衛省は「再調査」の実施に追い込まれましたが、防衛大臣はその後もなお「新屋適地は変えず」とか「隣県(青森・山形)への配備は予備的」などとの発言を繰り返し、知事が「話にならない」と反発する状況が続いています。このように曲折した経過から、防衛省も「
2023年運用開始」の計画は大幅にずれ込むことを認めています。

 参院選の勝利で反対運動に弾み
▽こうして迎えた月参院選では「イージス・アショア」が大きな争点に浮上し、「新屋配備反対」を明確に訴えた野党統一候補の「寺田静氏」が、賛否を明かさない自民党現職を大差で破り当選しました。
▽この選挙結果が、安倍が2回、菅が回も現地入りして選挙戦に臨んだ政権に大きな打撃を与えたことは確実で、その後選挙敗北の責任で県連会長を辞任した自民党現職衆院議員が「もう新屋配備は無理だ」と表明し、防衛省へ申し入れるという事態も生じています。
▽参院選に合わせて実施された魁新報社の世論調査でも、県民の「新屋配備反対意見」は6割を超え、「賛成」の2倍に達しています。この明確に示された民意に沿って、今後の国会審議が真摯に行われ弾みがつくことを、秋田県民は注目し期待しています。
▽参院選後、市民団体が県内25市町村議会へ訴えた「新屋配備反対の請願・陳情」の採択の動きも全県に広がりつつあり、これまで11市町村議会で採択され、議会では不採択になったものの、7議会は継続審査、4議会は年内審査を予定しています。
▽しかし、残念なことに肝心の県議会と秋田市議会の動きはなおも不十分です。月議会において県議会では自民会派の抵抗によって「反対決議」が否決され、代わりに自民提案の「安全確保決議」を採択、秋田市議会でも自民・公明会派の「再調査結果を見て」との理由から、またもや継続審議とされました。市民団体側はこの結果に強く不満を示しながらも、「今後は各議員の意見を直接聴取し、説得活動に乗り出す」との行動方針を打ち出しています。
▽県知事は、ようやく「新屋は不適」と明言するに至りましたが、一方で「反対であっても県には公的権限がない」との逃げ腰の姿勢も見せています。これに対しても反対運動側は、「民意に寄り添い、県民の暮らしの安全安心を守ることこそが県知事の任務と責任である」と、厳しく追及を続けています。

 「新屋配備反対」から「イージス・アショア不要」のたたかいへ
▽県知事と秋田市長が「ゼロベースで」との条件を突き付けて一旦ボールが投げ返され、防衛省による再調査は今なお進行中です。しかし、相手は沖縄辺野古問題への対応に見られるように、民意の蹂躙し暴政をふるい続ける安倍政権のことです。今後の情勢を楽観視することはけっして許されず、防衛省が再び「新屋配備」をゴリ押しし強行突破を図って来る事態は十分に考えられます。
▽そこで私たちは粘り強くたたかう姿勢を再確認し、「むつみ基地配備反対」の仲間とも連携しつつ、まずは政府が押し付ける「新屋配備」に反対し撤回させること。さらには、中国・ロシアをも巻き込んで東アジアに新たな緊張と軍備拡張競争を招く、無用無謀な「イージス・アショア導入計画」そのものを断念させる運動を展開していく必要があります。
▽今まさに“秋田県民の団結”が問われていますが、身上である“我慢強い雪国気質”を発揮して最後まで頑張り抜けば、必ずや明るい展望が開けるはずだと信じます。私もまた一県民として、これからも反対運動に参加していく決意です。現地秋田のたたかいの現状を報告し、全国の「ホテル・観光労連シニアネット」会員諸氏のご支援をお願いいたします。(終わり)

(文責=高橋征夫)