社説:自民党総裁選 安倍3選ありきでなく 
    
          東京新聞 2018年7月26日

 
安倍晋三総裁(首相)が連続三選を目指す九月の自民党総裁選。安倍氏優位とされるが、「安倍政治」の是非を問う機会でもある。三選ありきでない、複数候補による活発な政策論争を期待したい。

 自民党総裁選は三年に一度行われる。三年前の二〇一五年は無投票で安倍氏の再選が決まった。選挙戦になれば六年ぶりだ。

 岸田文雄政調会長が立候補見送りを表明したため、現職の安倍氏と石破茂元幹事長との対決が軸となる。野田聖子総務相も立候補を目指すが、推薦人集めが難航しているとの見方もある。

 衆参両院で多数を占める政権与党の党首選は、事実上の首相選びだ。一政党内の手続きでも、党員以外の多くの国民の目が光っていることを忘れるべきではない。

 仮に安倍氏が連続三選を果たせば、最長で二一年九月まで首相を務めることができる。第一次内閣の一年間と合わせれば、在任期間が戦前、戦後を通じて最長となる可能性すら出てくる。しかし、すでに長期政権の弊害が顕在化していることを直視する必要がある。

 第二次内閣発足から五年半がたった。首相官邸に人事権を握られた官僚が、権力中枢に忖度(そんたく)するようになったのではないか。首相らによる関与の有無が問題となった森友、加計両学園をめぐる問題はその弊害の表れだろう。

 一方、衆院小選挙区制や政党交付金制度で、選挙での公認権や政治資金の配分権が政権中枢に過度に集まり、与党議員が首相官邸にものが言えない雰囲気ができつつある。それは三権分立という民主主義の原則を脅かしかねない。

 特定秘密保護法や安全保障関連法、「共謀罪」法、「カジノ」法など、国民の間で反対や懸念が強い法律を強引に成立させた安倍政権の政治手法の問題もある。成長重視の経済政策の妥当性も問われるべきだろう。総裁選では、こうした「安倍政治」そのものを争点に位置付けるべきである。

 安倍氏の陣営は出身派閥の細田派や麻生、岸田、二階各派などの支持を得て、国会議員票の七割近くを固めたとされる。政権安定という大義のほか、閣僚や党役員などのポスト確保という思惑があるのだろうが、そうした「派閥の論理」にはうんざりだ。

 今回から制度が見直され、党員・党友ら地方票の重みが増した。政治に新たな地平を開くのはいつも地方の声だ。党員以外の意見にも耳を傾け、より国民に近い立場から首相選びに参画してほしい。

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