核兵器禁止条約今年も言及せず 国連提出「廃絶決議案」 政府方針

              毎日新聞20181015日 東京朝刊

日本政府は、国連総会第1委員会に18日にも提出する「核兵器廃絶決議案」で、国連が2017年に採択した「核兵器禁止条約」(核禁条約)に言及しない方針だ。昨年に続いて2年連続。米国の「核の傘」の下にある日本は、米国など核保有国に配慮して条約に署名していない。「唯一の戦争被爆国として、核兵器保有国と非保有国の橋渡し役になる」と強調するが、「核廃絶に後ろ向き」と、昨年に続いて国内外で批判される可能性もある。  決議案は将来の核廃絶に向け、日本政府が1994年から毎年提案している。米英仏中露だけに核保有を認めた核拡散防止条約(NPT)を前提に、核不拡散を維持しながら、保有国による段階的な核軍縮を目指すというのが日本政府の基本的な立場だ。「NPT体制の維持には保有国と非保有国の相互理解が欠かせない」として、今回も、保有国と非保有国の信頼構築や協力強化の重要性を促す方針だ。 6月の米朝首脳会談で合意した朝鮮半島の非核化を評価。昨年は核実験を重ねる北朝鮮を「平和や安全保障に対する重大な脅威で、NPT体制への挑戦」と強く批判したが、今年は北朝鮮にNPT体制への復帰を呼びかける表現に重点を置く。政府関係者は「決議案で核禁条約に言及してしまうと、米国など核保有国からの賛同が見込めなくなる」と説明。しかし、昨年は非核保有国から「米国の『核の傘』に入る日本は、核保有国寄り」と反発され、委員会採決での賛成は144カ国と16年に比べて23カ国減った。賛成国を増やすため、日本政府は「保有国と非保有国双方の主張の最大公約数と言えるものだ」と各国を説得する方針だ。 核禁条約の国連採択に主導的な役割を果たしたとして、昨年のノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の川崎哲・国際運営委員は「もし決議案で核禁条約に触れないのならば、日本は核保有国の立場を代弁しているに過ぎない。政府が目指す『橋渡し』の役目はできなくなる」と警告する。【光田宗義】