衆院選小選挙区での候補者の一本化に向け、野党各党の協議が始まった。

 過去2回の衆院選のように、野党候補が複数立てば、がっちり選挙協力を組む自民・公明の与党を喜ばせるだけだ。

 安倍首相が政権に復帰した2012年の衆院選では、与野党12党が乱立し、野党は共倒れの末に惨敗。14年は共産党を除く野党各党が約200の小選挙区で候補者を一本化したが、自公両党が圧勝した。

 そのひとつの帰結が「安倍1強」のおごりやゆるみにほかならない。政治に緊張感を取り戻すためにも、もう同じ失敗を繰り返してはならない。

 最大の焦点は、全国289の小選挙区に200人以上を擁立しようとしている民進、共産両党が、どう折り合うかだ。

 共産党は「共通政策、相互支援」を一本化の条件に掲げる。一方、共産党との連携に反対する議員を抱える民進党執行部は表だった共闘には慎重だ。

 だが、民進党の前原誠司代表は「向こう(与党)が1人、こちら(野党)が1人というのが望ましい」とも語っている。

 互いに譲り合い、できるだけ多くの選挙区で「1対1」の対決構図をつくり出す努力を、両党の執行部に求める。

 実際、野党候補の一本化は実績もあげている。

 昨夏の参院選では全国32の1人区で民進、共産など4党が候補者を一本化し、11勝21敗。3年前の2勝に比べ善戦した。

 首相の政権運営に危機感を抱く学生や学者らによる市民団体が、原発政策や安全保障関連法などで作った政策協定に、各党が合意した結果だった。

 地方選でも、昨年の新潟県知事選、今夏の仙台市長選などで勝利をたぐり寄せた。

 むろん、衆院選は有権者に政権選択を問う選挙である。

 民進党と共産党の消費税や自衛隊をめぐる立場の違いは「野合」批判にさらされよう。だが自民、公明両党も原発政策や憲法改正で開きがあるのに、長く政権を共有している。

 こんどの衆院選でも「森友・加計疑惑の追及」「原発ゼロをめざす」「拙速な憲法改正にはくみしない」など野党各党が一致する主張を、前面に掲げることはできるのではないか。

 地域によってさまざまな事情もあるだろう。それでも、可能な限り多くの選挙区で、与野党が競い合う構図になれば、有権者の半数近い無党派層も含め政治への関心が高まるはずだ。

 そんな舞台を整える責任が、野党各党にはある。