専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」と、残業時間の罰則付き上限規制を一本化した労働基準法改正案が秋の臨時国会に提出されることが15日、固まった。「高プロの導入に反対」と主張する連合は、規制の緩和と強化を抱き合わせる政府の戦略に抗しきれず、押し切られた格好だ。

 働き方改革関連法案の要綱について審議する厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会(労政審)の分科会が15日、法案要綱を「おおむね妥当」とする答申を出した。これを受け、政府は28日に召集予定の臨時国会に労基法改正案を含む関連法案を提出する。高プロを巡って連合の神津(こうづ)里季生(りきお)会長が安倍晋三首相に直接要請した働き過ぎ防止に関する修正内容は、政府が「丸のみ」した形となった。

 連合は政府と水面下で交渉し、高プロの「容認」に一時傾いたが、傘下の労組の猛反発に遭い、高プロ反対に立場を戻した。8月末に傘下の労組幹部を集めて開いた緊急集会で、神津氏は「国会に議論が移る前に私どもとして積極的に力を発揮しなければならない。労政審でアピールしていく」と力を込めた。

 しかし、労基法について審議する労政審の分科会は8月末から計4回、2週間ほどで終わった。最終回の15日も、連合の村上陽子総合労働局長が高プロに反対する姿勢を示したものの、最後は「労政審の決定プロセスを今後も大事にしていきたい」と結び、30分余りで閉会。労働側の高プロへの反対意見を答申に付記することで折り合った。

 労政審は労働法制の改正などを議論する場。国際労働機関(ILO)の条約に基づき、労働者の代表、使用者の代表、公益代表の3者が委員をつとめ、連合が労働側の委員を独占している。労働者の代表としての連合の責任は極めて重い。

 労政審の答申を受けて厚労省内で記者会見した神津氏は、「高プロの導入に反対という私どもの考えは根っこでは基本的にずっと変わりはない」と述べるにとどめ、一本化された労基法改正案の提出を受け入れた理由について言及しなかった。高プロを巡る迷走によって深く傷ついた労働者の代表としての威信を、労政審の議論を通じて取り戻すことはかなわなかった。

 過労死遺族でつくる「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子(えみこ)代表は、高プロ導入が過労死の増加につながりかねないと心配する。「連合はもうちょっと頑張ってくれると思っていた。労働者の代表としてどう政府に向き合ってきたのか説明してほしい」と話す。

 労基法改正をめぐる議論は、これから国会に移る。連合は支援する民進党と連携を密にして修正協議などを求めたい考えだが、審議の行方は見通せない。