労働政策審議会労働条件分科会にて、労働基準法改正法案の議論がスタート
  分科会終了後に報告集会を開催

主催者代表挨拶ならびに情勢報告
 連合本部・安永副事務局長


 8月30日、第138回労働政策審議会労働条件分科会が開催されました。
  分科会冒頭で、厚生労働省より、2015年に国会に提出され継続審議となっている労働基準法改正法案(2015年法案)と、6月に本分科会で建議を取りまとめた時間外労働の上限規制の法案とを一本化して国会に提出したい意向が初めて示されました。
 
 これに対し、労働者側委員からは、時間外労働の上限規制の法案は、長時間労働を是正するために早期に実現すべきであるが、一方で、2015年法案は、時間外労働の上限規制とは趣旨が異なるため、法案の一本化には反対であることを述べました。また、2015年法案のうち、中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予廃止と年次有給休暇の取得促進は、時間外労働の上限規制に盛り込むべきであるが、企画業務型裁量労働制の対象業務拡大と高度プロフェッショナル制度の創設については反対であることを主張しました。
 一方、使用者側委員からは、人口減少社会の中での生産性向上や、多様で柔軟な労働時間制度を創設する観点から、企画業務型裁量労働制の対象業務拡大と高度プロフェッショナル制度の創設は必要であり、2015年法案と時間外労働の上限規制の法案とを一本化し、臨時国会に提出すべき旨の発言がありました。

 分科会終了後に報告集会を開催し、主催者代表挨拶ならびに情勢報告として連合本部・安永副事務局長より、「労働時間は、働く者にとって最も基本的な労働条件であり、すべての労働者が健康とワーク・ライフ・バランスを確保しながら、健やかに働き続けられるようにする労働時間制度の実現をめざさなければならない。しかしながら、昨年だけでも過労死・過労自殺で労働災害に認定された方が200人近くいる。この状況を変えなければ『働き方を改革した』なんて言えるはずがない。今回、長時間労働を助長する内容を含む2015年法案と、長時間労働を是正する時間外労働の上限規制の法案は真逆の内容であり一本化するのはおかしい」と述べました。
 その後、分科会に出席した各委員より、法案の一本化に反対である旨に加え、「労働基準法は働く者の命と健康を守る最低基準を定めた法律であり、この理念のもとで労働基準法の改正を行うべきである」、「36協定の締結を忘れた、そもそも存在を知らない、過半数代表が適正な手続きで選ばれていないという実態があり、基本的なルールが守られていないなかで、高度プロフェッショナル制度の創設や企画業務型裁量労働制の対象業務を拡大していいはずがない」、「中小企業で働く者は、2010年より7年にわたり、月60時間を越える時間外労働の割増賃金率の適用が猶予されている。これ以上、中小企業で働く労働者を置き去りにしてはいけない。ダブルスタンダードの早期解消を」などと述べました。