「共謀罪」衆院委可決 「廃案まで抗議する」国会周辺、怒りの声やまず
    
             東京新聞 2017年5月20日

「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案に反対し、国会前に集まった人たち=19日午後

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が衆院法務委員会で可決された十九日、国会周辺に集まった人たちは、声を上げられる社会を守ろうと法案反対を叫んだ。特定秘密保護法、安保関連法、そして共謀罪法案。安倍政権下で繰り返される採決強行。「取り返しのつかないことになる」。法案に反対する人たちの抗議は深夜になっても続いた。 (石井紀代美、片山夏子、福田真悟)

 午後1時すぎ 「ただいま強行採決がされたもようです」。マイクを通して委員会の状況が伝えられると、国会周辺の歩道を埋めた
一千人を超える人から、「えー」という怒りと落胆の混じった声が漏れた。

 アムネスティ・インターナショナル日本の元副理事長石原秀子さん(78)は「戦後、享受してきた民主主義をそのまま次の世代に渡したい。今後も抗議し続けていく」。採決後も、路上では廃案を求める声が上がり続ける。「憲法違反の法律要らない」

 午後1時半 参議院議員会館で、宗派を超えた宗教関係者でつくる「宗教者九条の和」が緊急記者会見を開き、共謀罪の廃案を求める声明を発表。日本キリスト教協議会の小橋孝一議長は「六〇年安保の時は採決後、運動が収まったが、今回は粘り強く反対し続ける」と話した。

 衆院法務委員会を傍聴後、国会から出てきた東京都世田谷区の羽立教江(はだちのりえ)さん(76)は「納得できないまま採決されて涙が出てきた」と悔しそう。

 午後2時50分 三鷹市の心理カウンセラーの男性(52)が、米軍新基地建設が進む沖縄・辺野古(へのこ)で座り込む人たちと連帯する思いを込めて、沖縄の歌「島人(しまんちゅ)ぬ宝」を熱唱した。採決の強行に「あまりにひどい。国民の人権じゅうりんは既に始まっている」と厳しい表情で語る。

 午後3時 東京は二五・六度の夏日に。国会前で座り込みをする人たちは水を飲んだり、日傘を差したり。戦時中、外国帰りの祖父が特別高等警察に目をつけられ、非国民といわれたという茨城県筑西市の農業国府田喜久男さん(70)も座り込み。「政府がやろうと思えば、何でも取り締まれる。取り返しのつかないことになる。共謀罪が通っても、反対し続ける」

 午後7時45分 若者グループ「SEALDs(シールズ、自由と民主主義のための学生緊急行動)」の元メンバーらが結成した学生らでつくる新団体「未来のための公共」のメンバーが、国会正門前でマイクを握った。「自由にしゃべれる社会を守れ」「きょう・ぼう・ざい反対!」とリズミカルに連呼した。

 午後10時45分 デモが終わった後も若者らがその場に残り、話し込んでいた。東京都江東区の大学生近藤隆太さん(20)は「共謀罪の危険性とこれだけの人が反対しているということを世の中にアピールしたい。世論で審議を延長させられれば、廃案の可能性もある」と話した。