共謀罪 審議激化 自公維、18日衆院通過にらむ
    
            毎日新聞 2017年5月13日

 「共謀罪」の成立要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、自民、公明両党と日本維新の会は12日、衆院法務委員会で、取り調べの録音・録画(可視化)を付則に盛り込むなどした修正案の趣旨説明を行った。18日の衆院通過を目指すが、民進党も同法に人身売買や組織的詐欺の予備罪を新設する対案を説明し、攻防が一段と激化した。(後段」に論戦ポイント)

 修正案は、捜査機関の乱用に対する懸念を踏まえ、本則で「取り調べその他の捜査」は「適正の確保に十分に配慮しなければならない」と明記した。

 付則には、裁判員裁判の対象となる殺人罪などの重大事件と同様にテロ等準備罪の捜査でも可視化することや、全地球測位システム(GPS)を活用した捜査の制度のあり方について必要な措置を検討することを盛り込んだ。

 テロ等準備罪の捜査を巡っては、民進党などが「将来的に電話などの通信傍受を認める法改正が行われると監視社会が進む恐れがある」と指摘し、政府は「通信傍受の対象にすることは予定していない」と否定を繰り返している。

 この日の審議では林真琴法務省刑事局長が、通信傍受に必要な令状の発付に厳格な要件があると説明。「仮に通信傍受の対象にすると想定しても令状が発付される程度まで捜査が進んでいれば、(傍受せずに)逮捕するなど別の手法を選択する」と述べ、通信傍受の活用は非現実的との見方を示した。【鈴木一生】

衆院委論戦のポイント

 <捜査>

 山尾志桜里氏(民進) テロ等準備罪の嫌疑が固まる前の尾行や張り込みは違法か。

 林真琴・法務省刑事局長 嫌疑が生じていないのに犯人かどうかを確定したり証拠を確保したりするため、尾行や張り込みをすることは許されない。

 赤沢亮正氏(自民) テロ等準備罪の捜査で通信傍受をする必要があるか。

 刑事局長 仮に通信傍受の対象にすると想定しても、計画に基づき、実行準備行為が行われたと裁判官に十分疎明しないと、傍受令状は出ない。傍受令状が発付される程度まで捜査が進展していれば、(傍受することなく)容疑者を逮捕するなどの手法を選択する。

 <対象犯罪>

 浜地雅一氏(公明) 墳墓発掘死体損壊罪を対象犯罪に含めた理由は。

 刑事局長 組織的犯罪集団が資金を得るために埋葬品を領得することが考えられる。海外では墓の破壊がテロ行為として実際に行われている。

 <組織的犯罪集団>

 枝野幸男氏(民進) 組織的犯罪集団の構成員と認識していない者が犯罪の計画を立てた場合は。

 刑事局長 罪は成立しない。組織的犯罪集団構成員1人と、そう認識していない1人で計画を立てた場合、計画という要件は満たす。罪が成立するのは構成員1人だ。

 <計画行為>

 今野智博氏(自民) LINE(ライン)を見ただけでテロ等準備罪の計画をしたと言えるか。

 刑事局長 計画とは、組織的犯罪集団の構成員らが指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務を分担に従って、特定の犯罪を実行すると、具体的かつ現実に合意すること。メールやラインを見ただけで重大な犯罪の合意は成立しない。

 <法体系>

 逢坂誠二氏(民進) テロ等準備罪の新設は刑法体系の大転換ではないか。

 金田勝年法相 組織的犯罪集団が関与する一定の重大な犯罪の計画行為に加え、実行準備行為が行われた場合に限って処罰する。指摘は当たらない。

 藤野保史氏(共産) 日本の政治的言論、民主主義を縮小させるのではないか。

 法相 言論活動や市民運動をする一般の方々が処罰対象とならないのは明確で、言論が封じられ、萎縮するといった懸念は当たらない。