政府、辺野古埋め立て着手 沖縄 再訴訟はらむ対立
    
            東京新聞 2017年4月25日

辺野古埋め立て:開始の沖縄知事「暴挙」対抗の方針
    
            毎日新聞 2017年4月25日


政府、辺野古埋め立て着手 沖縄 再訴訟はらむ対立

東京新聞 2017年4月25日

護岸工事が始まった、米軍普天間飛行場移設先の沖縄県名護市辺野古沿岸部=25日午前10時4分

 沖縄県の翁長雄志知事は「差し止め訴訟」と「埋め立て承認の撤回」を中心に対抗策を温めている。ただ、政府も法的措置を講じて徹底抗戦する方針で、工事の進行を止める効果は不透明だ。

 工事には海底の岩石などを壊す作業が伴うため、政府は辺野古移設を受け入れた仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事に「岩礁破砕許可」を申請し、今年三月までの期限で受けた。

 この更新に翁長氏が応じない構えだったため、政府は許可の前提となる現場水域の漁業権を放棄するよう地元漁協に働き掛けて同意を取り付け、再申請は不要と判断した。沖縄県は知事の変更免許が出ていないことを理由に「漁業権は消滅しておらず、許可は必要」と主張しており、岩礁破砕行為が確認されれば工事差し止めを求めて提訴し、判決まで作業を中断させる仮処分も併せて申請することを検討している。

 もう一つは、仲井真氏が出した埋め立て承認の「撤回」だ。翁長氏は、承認後の沖縄の主要選挙で辺野古反対の民意が示されたことや、許可がない状態での岩礁破砕行為などを理由として行使の時期を探るとみられる。

 ただ、岩礁破砕について関連法を所管する水産庁は「漁業権は消滅し、知事の許可は不要になった」との公式見解を示している。差し止め訴訟で政府は、この根拠に加え、自治体が訴訟を通じて工事中止のような「行政上の義務」を履行させることはできないとする判例を盾に争う方針だ。

 埋め立て承認の撤回がなされた場合には「知事権限の違法な乱用」として訴訟を起こし、執行停止も申し立てるといった方策を用意している。

辺野古埋め立て:開始の沖縄知事「暴挙」 対抗の方針

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画で、防衛省は25日、埋め立て工事の第1段階となる護岸工事に着手した。大量の石材や土砂が投入されていけば自然環境の原状回復が難しく、沖縄県の翁長雄志知事は「暴挙としか言いようがなく、重大な決意で対処しないといけない」と述べた。県の許可を得ていない岩礁破砕行為が確認されれば、工事の差し止め訴訟を提起する方針。前知事による埋め立て承認の撤回も検討しており、政府と県が再び法廷闘争となるのは確実だ。

 1996年の日米両政府による普天間飛行場返還合意から21年。沖縄の反対を押し切って初めて辺野古での埋め立て作業が始まり、移設問題は重大な局面を迎えた。防衛省は完成させた護岸内に今年度内にも土砂を投入して埋め立てていく方針で、5年間で本体工事完了を目指している。

 県庁で記者団の取材に応じた翁長知事は「政府はなりふり構わず既成事実を作ろうと躍起になっているが、二度と後戻りができない事態には至っていない」と強調したうえで「あらゆる手法を適切な時期に行使し、全力で闘う」と語った。

 日米両政府に移設断念を働きかけるよう国際自然保護連合(IUCN)などの自然保護団体に協力を求めたことを明らかにした。一方で3月に「必ずやる」と明言した埋め立て承認の撤回時期は明言しなかった。

 一方で稲田朋美防衛相は25日、「工事の開始は多くの人が望んできた普天間飛行場の全面返還を実現する着実な一歩となる」とのコメントを発表。普天間飛行場の固定化回避と危険性除去を強調して県民に理解を求めつつ、移設工事を予定通り進める構えを示した。

 菅義偉官房長官は記者会見で「作業の安全に十分留意し、関係法令に基づいて自然環境や生活環境に最大限配慮し、早期に工事を進めたい」と述べた。翁長知事が埋め立て承認の撤回や工事の差し止め訴訟で対抗する方針を示していることに対し、菅氏は「(昨年12月に)最高裁の判断が下ったので、政府としては懸念材料は全くない」と強調した。【佐藤敬一、田中裕之】