1996年の日米両政府による普天間飛行場返還合意から21年。沖縄の反対を押し切って初めて辺野古での埋め立て作業が始まり、移設問題は重大な局面を迎えた。防衛省は完成させた護岸内に今年度内にも土砂を投入して埋め立てていく方針で、5年間で本体工事完了を目指している。
県庁で記者団の取材に応じた翁長知事は「政府はなりふり構わず既成事実を作ろうと躍起になっているが、二度と後戻りができない事態には至っていない」と強調したうえで「あらゆる手法を適切な時期に行使し、全力で闘う」と語った。
日米両政府に移設断念を働きかけるよう国際自然保護連合(IUCN)などの自然保護団体に協力を求めたことを明らかにした。一方で3月に「必ずやる」と明言した埋め立て承認の撤回時期は明言しなかった。
一方で稲田朋美防衛相は25日、「工事の開始は多くの人が望んできた普天間飛行場の全面返還を実現する着実な一歩となる」とのコメントを発表。普天間飛行場の固定化回避と危険性除去を強調して県民に理解を求めつつ、移設工事を予定通り進める構えを示した。
菅義偉官房長官は記者会見で「作業の安全に十分留意し、関係法令に基づいて自然環境や生活環境に最大限配慮し、早期に工事を進めたい」と述べた。翁長知事が埋め立て承認の撤回や工事の差し止め訴訟で対抗する方針を示していることに対し、菅氏は「(昨年12月に)最高裁の判断が下ったので、政府としては懸念材料は全くない」と強調した。【佐藤敬一、田中裕之】