福島第一原発の事故を起こした東京電力は、本当に反省しているのだろうか。
 そんな根本的な疑問を抱かせる事態が起きている。

 東電が早期の再稼働をめざす柏崎刈羽原発(新潟県)6、7号機で、重要施設の耐震性不足など重大な事実が次々と明らかになった。6年前の事故を受けて定められた新たな規制基準による審査が、原子力規制委員会で大詰めを迎えた中での話である。

 規制委が東電の広瀬直己社長を呼び、「社長の責任で総点検し、信頼できる申請書を出し直してほしい」(田中俊一委員長)と強く求めたのも当然だ。 事故前より厳しくなった新規制基準も、規制委による最低限の要求に過ぎない。最新の知見に常に目を配り、より高い安全性を確保する最大の責任は電力会社にある。

 不都合な情報を軽んじたり、対応が遅れたりする会社に、原発を運転する資格はない。

 規制委が広瀬社長を呼び出したきっかけは、柏崎刈羽原発で緊急時対策所と位置づけてきた免震重要棟の耐震問題だ。 東電は「震度7に耐えられる」と説明してきたが、審査のなかで、想定される地震の半分の揺れでも揺れ幅が限度を超える可能性を認めた。14年にはわかっていたという。「部署間の連絡不足で情報が共有されなかった」と東電は弁明したが、それで許される話ではない。

 柏崎刈羽原発では、防潮堤の地盤が地震で液状化する恐れがあることなども、東電は最近まで明らかにしなかった。規制委からは「東電は不備を率直に示さない」などと批判が相次ぐ。

 地元の自治体も同じだ。

 再稼働に慎重な米山隆一・新潟県知事は、東電への不信感をあらわにした。再稼働に一定の理解を示してきた桜井雅浩・柏崎市長も、昨年明らかになった福島第一原発での炉心溶融隠しなどと合わせ「東電の体質への不安が高まった」と述べ、再稼働を「認めない可能性もある」と話す。

 東電は07年の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発の事務棟が壊れたことを教訓に、免震重要棟の導入を各地で進め、福島第一原発の事故では現場指揮所となった。ただ、免震工法では新規制基準を満たすのが難しいケースがあることも、他の電力会社の審査でわかっていた。学ぶ姿勢が足りないとの指摘もある。

 東電は、組織や社風から見直すべきだと何度も指摘されてきた。もう一度、繰り返すしかない。改めて自覚してほしい。