福井・高浜原発 再稼働へ 停止処分覆す 大阪高裁、絶対的安全求めず 

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止めた大津地裁の仮処分決定について、大阪高裁は28日、関電の保全抗告を認め、地裁の判断を取り消す決定を出した。山下郁夫裁判長は、国の原子力規制委員会が策定した新規制基準の合理性などを認め、「安全性が欠如しているとは言えない」と判断した。決定は即座に効力を持つため、1年ぶりに2基の再稼働が法的に可能になった。これを受け、関西電力は再稼働の準備に入る。再稼働は5月以降、営業運転は6月以降の見通しだが、総点検の進展次第では、ずれ込む可能性もある。

 住民側は最高裁への特別抗告などを断念する方向で検討している。

 決定はまず、原発の安全性に関する判断基準について、「『絶対的安全性』を要求するのは相当ではない」と強調した。昨年3月の大津地裁決定と同様、安全性の立証責任は関電側にあるとの立場を取る一方、関電側が説明を尽くした場合は住民側にも安全性の欠如についての証明が必要とした。

 東京電力福島第1原発事故後に規制委が策定した新規制基準について、「事故原因は未解明な部分も残っているが、最新の科学的・技術的知見に基づいて策定された」と指摘。福島事故の教訓を踏まえていないものではないとした。

 そのうえで、山下裁判長は新規制基準に基づく原発の安全審査に不合理な点がないかどうかを検討した。 
電力会社が耐震設計で想定する最大の揺れ(基準地震動)について、「関電は信頼できる関係式に基づき設定し、断層の詳細な調査結果も踏まえて余裕をもたせてある」と述べた。 

 高浜原発の近隣自治体がまとめる事故時の避難計画については、「いまだ改善の余地はあるものの、国や電力会社、自治体が主体となって適切に取り組まれている」と指摘した。 

 関電側の立証が尽くされている一方、住民側による安全性欠如の証明はなされていないとして、山下裁判長は「高浜原発3、4号機の安全性が欠けているとは言えない」と結論付けた。 

 仮処分は高浜原発から70キロ圏内に住む滋賀県の住民29人が申し立て、原発の過酷事故が起きれば平穏に暮らせる人格権が侵害されると訴えた。【向畑泰司】


高浜原発 大阪高裁決定 骨子

・高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定を取り消す

・原発に「絶対的安全性」を要求するのは相当ではない

・新規制基準は最新の科学的・技術的知見に基づいて策定されており、福島事故の原因究明や教訓を踏まえていない不合理なものとはいえない

・基準地震動の策定は合理性が検証されている関係式などが用いられており、過小であるとはいえない