脱原発巡り紛糾 党勢回復切り札、支援労組反発
電力総連会長「納得いかない」民新の原発ゼロ前倒し
                           

脱原発巡り紛糾 党勢回復切り札、支援労組反発
              毎日新聞 2017年2月17日


記者会見で質問を聞く民進党の蓮舫代表=東京都千代田区の同党本部で16日、川田雅浩撮影


■民進党は16日、党エネルギー環境調査会の会合を開き、次期衆院選に向けた原発政策について議論を本格化させた。党執行部は原発稼働ゼロの目標年限を「2030年代」から「30年」に事実上前倒しする方針で、蓮舫代表は原発政策を3月12日の党大会の「目玉」として打ち出す構えだ。だが、党内の原発推進派らが一斉に反発。支援労組の連合も16日、蓮舫氏に苦言を呈し、先行きの見えない状況となっている。【葛西大博】

■「こんな大事なことを党幹部だけで決めていいのか。党が割れてしまう」。60人以上の党所属議員が詰めかけた16日の調査会会合。蓮舫氏も参加する中、原発稼働ゼロの年限前倒しを検討する執行部に対し、出席議員から不満が噴出した。

 調査会の玄葉光一郎会長は会合の後、「もっとじっくり(議論を)やってほしいという意見がかなりあった」と説明。「(党大会の)『3・12』で何が言えるかはまだ分からない」と述べた。

 混乱の発端は、蓮舫氏らの意向を受けた玄葉氏が今月初めの調査会会合で、省エネルギーや節電が進んだ現状を踏まえ、原発ゼロの年限を「30年」に前倒しし、党が策定を目指す「原発ゼロ基本法案」(仮称)に明記する方針を示したことだ。執行部が前倒しにこだわるのは、12年の衆院選公約で掲げた「30年代に原発稼働ゼロ」からさらに「脱原発色」を強める狙いがある。

 安倍政権が働き方改革をはじめ、民進党が重視してきた労働・教育問題にも政策の力点を置く中、民進党にとって脱原発は再稼働を目指す政権との明確な対立軸になる。執行部は党勢回復の切り札とみており、共産、自由、社民3党との距離を縮めることにもなる。

 しかし、玄葉氏が示した方針は、党内の原発推進派や脱原発に慎重な議員にとって寝耳に水で、電力総連出身の小林正夫参院議員らは9日、野田佳彦幹事長に「結論ありきで見直せば党内の混乱を生む」と申し入れた。

 反発は支援労組へも広がる。連合の神津里季生会長は16日、蓮舫氏と会談し「政策に揺らぎが生じてはいけない。30年代ゼロに向けた工程表もないのに数字だけ前倒しするなら民進党にとって大きなマイナスになる」と懸念を示した。17日に予定していた民進党との定期会合も延期した。

 だが、蓮舫氏は「30年ゼロ」実現に向け、各労組を回って理解を求めており、16日の記者会見で「(6年前に東日本大震災が起きた)3・11の翌日が党大会。(原発政策の)考え方を示したいとの考えは変わっていない」とこだわりを見せた。

自民、争点化警戒

 自民党は、原発問題が争点になった昨年の鹿児島、新潟両県知事選で連敗しており、民進党の動向に警戒感を示す。ただ、経済重視の立場から原発政策を変えるわけにはいかず、選挙の争点化を避けようと腐心している。

 「原発が選挙で問われるのでないか」。廃炉問題が議題になった先月末の自民党総務会で党重鎮がこう漏らした。石破茂前地方創生担当相は「私の幹事長時代は『原子力規制委員会の規制基準を満たした原発は動かす。廃炉費用の捻出に必要』と訴えた」と説明したが、党内には選挙への影響を懸念する声が根強い。昨年7月の鹿児島県知事選、同10月の新潟県知事選では、いずれも原発懐疑派の候補が与党系候補に勝利した。党幹部は「原発への反発が根強いと再認識した」と振り返り、原発問題が安倍政権の数少ない「アキレスけん」になると認めた。

 ある原発推進派の中堅議員は「原発は粛々と再稼働するしかない。表立った動きを控えれば、与野党の対立軸に浮上しない」と指摘する。【大久保渉】



電力総連会長「納得いかない」 民進の原発ゼロ前倒し
                 東京新聞 2017年2月17日

 写真はインタビューに応える岸本氏。

 電力会社などの労組でつくる電力総連の岸本薫会長は17日、共同通信のインタビューに応じ、民進党執行部が検討する「2030年代原発ゼロ」目標の「30年」への前倒しに反対する姿勢を明確にした。「議論の進め方が納得いかない。『30年ゼロ』とピン留めすべきでない」と述べた。

 電力総連は、民進党の支持組織である連合に加盟している有力団体。蓮舫代表は3月の党大会までに新目標の方向性を示す構えで、調整は難航しそうだ。

 岸本氏は、民進党内の原発政策見直しの動きを1月下旬まで知らなかったと説明。「冷静かつ現実的な議論をしてきたとは感じない。現場は困惑している」と批判した。

(共同)