労働基準法は労働時間を1日8時間、週40時間と定め、残業させる場合は労使協定(36協定)を結ぶ。さらに特別条項を付けると、最大6カ月まで無制限に残業させることが可能になり、長時間労働の温床となっている。
政府案は、残業時間の上限を法律で定め、違反企業に対する罰則を設ける。一方、特例で月平均60時間までの残業を認め、労使協定を義務付ける。月平均60時間は「過労死ライン(直前2〜6カ月の平均が月80時間超)を踏まえ、ワーク・ライフ・バランスを改善する」ことを目指す時間という。厚労省の調査では、60時間を超える残業をさせている企業は4・4%だった。
ただし、無制限の残業を防ぐため、1カ月の上限時間を定める。政府は100時間まで認める案を検討しているが、連合側が反発している。3月末に働き方改革実現計画をまとめるまでに、関係者間で調整する。
経団連の榊原定征会長は記者団に「実態とかけ離れた厳しい規制は、国際競争力や中小企業に影響を及ぼす懸念がある」と指摘。連合の神津里季生会長は「労働時間に上限を設ける意義は極めて大きい。立場によって開きはあるが、合意形成を図っていきたい」と述べた。【阿部亮介】
長時間労働是正の政府案
・時間外労働の上限を月45時間、年360時間と法律で明記し、違反には罰則を科す
・特例として年720時間(月平均60時間)まで認める
・特例であっても超えられない月当たりの上限時間を設ける
・特例適用には労使協定を義務付ける
・災害などの場合に労働時間の延長を認める現行法の規定は継続