原発頼みの経営の危うさを示す、自己保身が主目的の延命策だ。
日本原子力発電(原電)は来年11月で運転開始40年を迎える東海第2原発(茨城県東海村)の運転延長を原子力規制委員会に申請した。
首都圏唯一の原発で、避難計画の策定が義務づけられた30キロ圏には全国最多の約96万人が暮らす。計画作りは難航している。しかも、約1800億円とされる安全対策費の調達すら、めどが立っていない。
再稼働や延長申請に踏み切れる状況とは言い難い。原電は出資者である電力会社などとも協議し、経営の抜本的な見直しこそ急ぐべきだ。
原電は、電力大手9社などの共同出資で設立された原発専業会社だ。東京電力福島第1原発事故後の原発停止で、2012年度以降は発電量がゼロになった。廃炉になったり、活断層の存在が指摘されたりしたことで、再稼働が見込める原発は東海第2しか残されていない。
だからといって、再稼働や運転延長が安易に許されてはならない。
「原発40年廃炉の原則」は福島第1原発事故を教訓に導入された。規制委が認めれば最長で20年間延長できるが、あくまで例外的措置とされた。東海第2原発がなくとも、国内の電力需給に大きな影響はない。このままでは40年原則は形骸化する。
原発が稼働せずとも原電が倒産しないのは、売電契約を結ぶ東電などの電力会社から、設備の維持管理費などとして年間1000億円規模の基本料金を受け取っているからだ。消費者は、知らぬ間に、電気料金としてそのツケを支払っている。
原電に安全対策費をすべて自力で拠出する財務余力はない。規制委が費用を債務保証する電力会社などの提示を求めているのは当然だ。
東海第2原発の30キロ圏には県庁所在地の水戸市など14市町村が位置する。原電は、県と東海村に加え、水戸市など周辺5市にも再稼働の了解権を認める方針を示している。避難計画作りに苦慮する自治体が、再稼働に同意するかも見通せない。
原電は日本初の商業炉だった東海原発の廃炉作業中で、他社に先駆けてノウハウを蓄積している。廃炉専業会社として生き残りを図る方が、将来性も見込めよう。政府もその方向に誘導すべきだ。