ノーベル平和賞:サーロー節子さん「核廃絶の始まりに」 



※左の写真:ノーベル平和賞授賞式に出席したサーロー節子さん(中央)=2017年12月10日、AP

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【オスロ竹下理子】核兵器を初めて法的に禁じる核兵器禁止条約の採択に主導的な役割を果たした国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)へのノーベル平和賞授賞式が10日、オスロ市庁舎で開かれた。広島で被爆し、ICANと共に活動してきたカナダ在住のサーロー節子さん(85)が被爆者として初めて受賞演説し、「人類と核兵器は共存できない。核兵器は必要悪ではなく絶対悪だ。私たち被爆者は72年にわたり、核兵器の禁止を待ち望んできた。これ(条約採択)を核兵器の終わりの始まりにしよう」と英語で訴えた。

 ICANのベアトリス・フィン事務局長(35)と共に登壇し、メダルと賞状を受け取ったサーローさん。演説では「核兵器の時代を終わらせることは可能だという大いなる希望を与えてくれる」と受賞の意義を述べた。また、原爆で姉らを失った体験を語り、「みなさんに広島や長崎で亡くなった人々の存在を感じてほしい。一人一人に名前があり、一人一人が誰かに愛されていた。彼らの死を無駄にしてはいけない」と世界に呼びかけた。

 フィン事務局長も演説し、「核兵器が使われるリスクは冷戦が終わった時よりも大きくなっている」と指摘。「私たちの運動を批判する人たちは、私たちのことを現実に基づかない理想主義者だと言う。しかし私たちが示しているのは、唯一の理にかなった選択だ」と強調し、核保有5大国の米露英仏中に、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を加えた計9カ国を名指しして条約への参加を呼びかけた。

 授賞式には日本原水爆被害者団体協議会の田中熙巳(てるみ)代表委員(85)と藤森俊希事務局次長(73)、松井一実・広島市長、田上富久・長崎市長も出席した。ノルウェー・ノーベル賞委員会のアンデルセン委員長は核兵器なき世界へ向け新たな機運を作ったことに敬意を表した。

 核兵器禁止条約は核保有国の核軍縮の停滞を背景に、今年7月に122カ国が賛成して採択されたが、米国の「核の傘」の下にある日本などは交渉に参加しなかった。この日の授賞式も核保有5大国の駐ノルウェー大使は欠席した。

 【ことば】核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN=International Campaign to Abolish Nuclear Weapons)

 「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)を母体として2007年にオーストラリアで結成された国際NGOネットワーク。スイス・ジュネーブに事務局を置き、世界101カ国の468団体で構成される。日本からはNGO「ピースボート」や人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」など5団体が参加している。核兵器禁止条約の制定を目指して各国政府や市民社会に働きかけてきた。

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