30キロ圏、避難計画作り難航 東海第二原発、運転の延長申請 

左の図は東海第二原発の30キロ圏内の地域

 日本原子力発電(原電)が24日、運転開始から40年が近づく東海第二原発(茨城県東海村)について、20年の運転延長を原子力規制委員会に申請した。周辺自治体の同意、避難計画の策定、資金繰りなど多くの課題を抱えながら一歩踏み出そうとする原電に、異論の声も上がる。

 ■村内には廃炉論や必要論

 東海第二原発から30キロ圏の14市町村には約96万人が暮らす。これまで原発事故を想定した広域避難計画の策定は難航し、どの市町村もできていない。

 1999年のJCO臨界事故で村民避難を指揮した村上達也・前東海村長は、運転延長の申請は再稼働につながる重大な行為だと指摘。「人口が多い地域にある、よぼよぼの原発を動かすのに、何の意味があるのか。国が主導して廃炉にすべきだ」と批判する。

 村民の受け止め方は様々だ。延長申請に理解を示す男性(81)は「雇用を守るためにも原発は必要」。パート従業員の女性(63)は「事故が起きたら道路が混雑して逃げられない。延長申請はしないでほしかった」と不満をあらわにした。

 東海村と周辺5市でつくる首長懇談会と原電の間では、原発運転の際の約束事などを決める「原子力安全協定」の話し合いが22日にあったばかり。首長らは延長申請が再稼働に直結しないことを原電側に確認したという。

 大井川和彦知事も再稼働につながる動きを注視する構えだ。「県民の関心が高いので、理解を得る努力をしてほしい」と原電に注文をつける。(箱谷真司)

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 東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型の原発の延長申請は初めて。規制委は今後、原子炉が計60年間の運転に耐えられるか判断する。ただ、運転延長の認可までには、東海第二の安全対策が新規制基準を満たすと認める審査書が正式決定され、詳しい設備の設計も認可される必要があり、来年11月の期限までに審査が間に合うか、なお不透明だ。

 原発事故後、原発の運転期間は原則40年までとなり、最大20年延長するには規制委の認可が必要になった。これまで関西電力高浜原発1、2号機と美浜原発3号機(いずれも福井県)が延長を認められている。

 東海第二に続く35年超の原発は5基。このうち関電大飯原発1、2号機(福井県)は設計が特殊で、関電は廃炉を検討しているとされる。四国電力は伊方原発2号機の扱いを年内に判断する方針だ。(小川裕介)