政府は東京電力福島第一原発の廃炉費用や賠償費用を、4月の電力小売り全面自由化で参入した「新電力」にも負担を求める方向で検討に入った。東電の廃炉費用が想定の2兆円を大きく上回る見通しとなり、新たな財源確保が必要と判断した。大手電力会社が持つ送電網の「使用料」に上乗せして、新電力にも支払わせる案が有力だ。

 経済産業省は27日、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の下に小委員会を設け、具体的な制度設計を始める。年内にとりまとめ、来年の通常国会に電気事業法改正案の提出を目指す。ただ、原発を保有する大手電力が本来負うべき責任を国民全体に負わせる形になり、「東電救済策」という批判は避けられそうにない。

 原発の廃炉費用は、その原発を持つ大手電力会社が自社の電気料金からまかなうのが原則だ。巨額の費用が見込まれる東電福島第一原発の廃炉などについては、大手電力会社が負担金を納める国の認可法人「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が支援する仕組みを整えた。

 ただ、2兆円と見込んできた福島第一原発の廃炉費用はさらに膨らみそうだ。賠償費用も5・4兆円の見込みだったが、すでに6兆円台に達している。東京電力ホールディングスの数土文夫会長は廃炉費用について「今のところ見えていない」と説明。「負債が青天井では経営再建に有効な手が打てない」と、国に追加支援を求めている。

 そこで政府が目をつけたのが、将来的に拡大が見込まれている新電力だった。4月以降に新電力に切り替えた消費者も、それ以前は大手電力を利用していた。消費者間の負担の公平性を確保するうえでも、新電力利用者に「過去分」の負担を求める必要があると判断した。

 しかし、4月の電力小売り自由化をきっかけに、再生可能エネルギーの比率が高い新電力を選んだ消費者もいる。新電力幹部は「原発の尻ぬぐいをしろというのは都合が良く、ありえない話だ」と反発する。消費者の考え方やニーズに応じて電力の選択権を与えようという「電力自由化」の理念に沿わないという批判も出そうだ。経産省は別途、東電の経営改革について検討する委員会も設置する。(風間直樹)