毎日新聞社説:民進党 まず無責任体質改めよ
    
               毎日新聞2016年8月3日

 民進党の岡田克也代表が9月の代表選に立候補しない考えを表明し、党内では次の代表選びに向けた動きが始まっている。

 しかし次に進む前に指摘しておかなくてはならない点がある。岡田氏が東京都知事選投票の前夜に不出馬表明したことだ。民進など野党4党が推薦した鳥越俊太郎氏の敗北を見越して、その責任をうやむやにするためだったとしか思えないからだ。

 岡田氏に対して党内からも「敵前逃亡」などと批判が出ているのは当然だ。ただし、これも多くの国民には敗北の責任をなすりつけ合っているように映っているはずだ。

 民進党は旧民主党時代から代表が交代するたびに結束を呼びかけながら、その直後に内紛が起きてきた。今のままでは、それが繰り返される可能性がある。まず、こうした無責任体質を改めないと新代表を選んでも国民の信頼は得られない。

 岡田氏は先の参院選について「どん底から反転攻勢の一歩を踏み出すことができた」と総括し、「私自身の達成感がある。一区切りつけて新しい人に担っていただいた方が望ましい」と不出馬の理由を語った。

 そうであるなら、参院選直後に表明していればよかった話だ。

 岡田氏が進めてきた共産党も含めた野党共闘路線には民進党内でも異論が根強い。都知事選敗北が決まった後で不出馬表明すれば、負けた責任を取ったとみなされ、共闘路線の失敗を認めたと受け止められるかもしれない−−。岡田氏はそんな事態を避けたかったのだろう。だが、それは党内だけを意識した理由だ。

 そもそも参院選の総括も甘すぎるのではないか。参院選の1人区(改選数1の選挙区)で野党共闘が一定の効果をあげたのは事実だが、岡田氏が目標にしてきた「改憲勢力3分の2阻止」ができなかった以上、率直に敗北と認めた方がいい。

 都知事選に関しても、自民党が分裂した選挙だったにもかかわらず、大敗したことを、もっと深刻に受け止めるべきである。

 もちろん、次の代表選では野党共闘路線の是非が大きな焦点となる。政権選択の選挙となる衆院選でも共闘を続けるのかどうかは、やはり議論が必要だ。自衛隊の位置づけをはじめ共産党との大きな違いを棚上げにしたままでは、これまた有権者に対して無責任だからだ。

 そして、この路線の議論は、これまで放置してきた憲法や安全保障に関する民進党内の意見の違いを埋めることにもなる。

 選挙の敗北を厳しく受け止める。今後の路線や基本政策は徹底的に議論して、いったん決めたら従う。それが政党の基本というものだ。