「1人区」が勝敗左右 過去5回の参院選
    
                  東京新聞2016年6月5日 

 
七月十日投開票の参院選で、勝敗を左右するのが改選定数一の選挙区「一人区」だ。自民、公明両党が連立して以降、五回行われた参院選を振り返ると、時々の与野党の勢いによって一人区の勝敗が振り子のように揺れ動き、参院選全体の獲得議席に大きく影響してきた実態が浮かび上がる。 (横山大輔、宮尾幹成)

 最近五回の参院選はいずれも改選百二十一議席。都道府県への議席配分を見直す定数是正に伴い一人区は増える傾向にあり、今回は三十二選挙区となる。

 二〇〇一年、一〇年、一三年の参院選では、自民党は多くの一人区で勝利。特に〇一年と一三年は一人区で二敗しただけで、公明党などと合わせた与党の全獲得議席数(複数区や比例代表を含む)は、民主(現民進)、共産、社民など非自公勢力を大きく上回った。

 逆に、第一次安倍政権当時の〇七年参院選では、自民党は二十九の一人区のうち二十三選挙区を失う大敗を喫した。公明党、自民系無所属を合わせた獲得議席数(同)は四十七止まり。非改選議席を合わせた参院の過半数を失い、衆参で多数派が異なる「ねじれ」を生んだ。

 当選者が一人だけの一人区は、与野党で議席を分け合うことが多い複数区と異なり、得票差が小さくても当落が分かれ、全体の結果に与える影響が大きい。各党が一人区を重視するのはこのためだ。

 今回大きく変わるのは、安全保障関連法の廃止などで一致した民進、共産、生活、社民の野党四党が、三十二の一人区すべてで事実上の統一候補を擁立すること。これまで非自公勢力は比例票の上積みを狙い、一人区にそれぞれ独自に擁立する意識が強かった。

 本紙の集計では、最近五回の参院選で、共産党が一人区に公認候補を擁立しなかったのは沖縄選挙区で四回あっただけ。これに対して自公両党は、一人区は公明党が自民党候補を支援する関係が定着していた。

 この変化が一人区の「振り子」に影響するか。民進党の岡田克也代表は「与党候補と野党候補が一対一で戦う分かりやすい選挙戦」に持ち込んだと指摘。自民党幹部は「野党共闘は怖い」と警戒している。