民進や共産など野党4党が、7月の参院選で32ある1人区すべてに統一候補を立てる。史上初めてのことだ。

 各党は日米安保や原発再稼働など基本的な政策が違い、これまで互いに議席を争ってきた。そんないきさつを乗り越えて共闘するのは画期的である。

 二つの点で評価する。

 まず3年半続く安倍政治と異なる、もう一つの民意の受け皿を有権者に示すことだ。「安倍1強」に対峙(たいじ)する勢力がひとつにまとまれば、政治に緊張感も生まれるだろう。

 安倍首相はアベノミクスでデフレ脱却をめざす一方で、特定秘密保護法をつくり、歴代内閣の憲法解釈をひっくり返して安保法制も成立させた。ともに反対論を数の力で押し切った。

 そして、この参院選で憲法改正を発議できる3分の2以上の勢力を確保し、いよいよ改憲に取りかかろうとしている。

 こんな首相のやり方に、若者を含む多くの人々が危機感を抱いている。いまも続く「アベ政治を許さない」という市民の声の広がりが、野党の背中を押したのは確かだろう。

 多くの選挙区で候補者を取り下げた共産党の判断も大きかった。民主、維新の合流も足並みをそろえやすくした。

 次に、投票率の向上が期待できることだ。1人区に複数の野党候補が立てば、よほどの風がなければ勝ち目はなかった。勝敗が見えていては有権者の関心も薄れがちだ。12年、14年の衆院選と13年の参院選での自民党の主な勝因は、野党がそれぞれ候補を立てたことだった。

 だから提案する。野党は比例区でも共闘してはどうか。一つの政治団体をつくり、統一名簿に各党の候補者を順不同で並べるのだ。政権への対決姿勢がより鮮明になるのは間違いない。

 慶応大の小林節名誉教授らが提案してきたが、なかなか実現しそうにない。民進党が否定的だからだ。統一名簿は小政党の救済策だろう、衆参同日選になれば衆院選と投票先が違って混乱する、といった理由だ。

 だが、同日選はなさそうだ。

 ほとんどの1人区で候補擁立を見送った共産党が比例区にこだわるのはともかく、野党第1党の民進党こそ共闘の音頭をとってはどうか。

 統一名簿には、分散する野党の票を一つにまとめ、死票を減らすメリットもある。

 与党の「野合」批判にこたえるためにも、統一名簿づくりの目的と選挙後の活動方針を各党で合意し、有権者にはっきり説明しておくことも欠かせない。