派遣法改正案、成立へ 働き手代えれば無期限可能に
                朝日新聞 2015年06月11日 

 
 働き手を代えれば、企業が派遣社員を期限なく受け入れられるようにする労働者派遣法改正案が今国会で成立する見通しとなった。維新の党などが議員立法で提出し、正社員と派遣社員らの賃金格差の解消をめざす「同一労働・同一賃金」推進法案について、自民、公明両党が維新の修正案に賛成し、成立させることで合意。代わりに維新が派遣法改正案の採決を容認した。

  • 雇い止め広がる不安

 現行の派遣法は、企業が無期限に派遣社員を受け入れられる仕事を通訳や秘書など「専門26業務」に限り、それ以外は最長3年に制限している。

 一方、今回の派遣法改正案では、どの業務も同じ職場で働ける期間を「原則3年」とする一方、企業は労働組合などの意見を聞くことを条件に、働き手を代えれば業務内容に関係なく派遣社員を受け入れ続けることができる。

 派遣法改正案をめぐっては、野党や労働組合が、企業が正社員から派遣社員に仕事を置き換えるようになるとして「生涯ハケン法案」と批判。条文の誤記載や衆院解散もあり、2回廃案となった。今国会では、日本年金機構から125万件の個人情報が流出した問題が起き、衆院厚生労働委員会で採決の見通しが立っていなかった。

 このため自民、公明両党は、維新と民主党、生活の党と山本太郎となかまたちが提出した「同一労働・同一賃金」推進法案について、維新と修正協議を行って賛成する代わりに、派遣法改正案の採決を容認するよう提案。維新は派遣法改正案の採決に出席し、反対することで折り合った。

 推進法案は、同じ仕事なら正社員と派遣社員らの待遇を同じにすることをめざす。だが、自民と維新の修正協議で、当初案にあった「待遇の均等の実現を図る」との文言が、待遇のバランスをとるという意味を含む「待遇の均等および均衡の実現」に変わった。「同一労働・同一賃金」が実現するかは不透明になり、維新内にも「当初の中身が骨抜きになった」(幹部)との声がある。

 与党は週内にも衆院厚生労働委員会で派遣法改正案を採決し、来週にも衆院を通過させたい考えだ。(藤原慎一)

■国会会期、大幅延長へ

 政府・与党は10日、24日までの通常国会の会期を大幅に延長する方針を決めた。安倍晋三首相が10日、自民党の谷垣禎一幹事長と首相官邸で会談し、会期を延長して安全保障関連法案の成立をめざす方針を改めて確認した。当初の与党の見込みより審議が遅れており、盆前の8月10日までの延長を軸に検討するが、それ以上の延長になる可能性もある。

 谷垣氏は会談後、記者団に「会期の問題を含め、国会対策委員会などで議論に入っている」と語った。野党が安全保障関連法案に強く反発していることから、谷垣氏は10日、公明党の井上義久幹事長らとも協議。24日の会期末までに法案を衆院で採決するのは困難だとの認識でも一致した。

 今国会では、日本年金機構から約125万件の個人情報が流出した問題も浮上。労働者派遣法改正案の衆院厚生労働委員会での審議が滞るなど、政府が重要視する法案の審議が全体的に遅れており、大幅な会期延長が不可避だと判断した。

 また参院国家基本政策委員会は、党首討論を17日に開くことを決めた。

■労働者派遣法改正案の骨子

・同じ派遣先の職場で働ける上限を3年に

・同じ職場でずっと働ける「専門26業務」を撤廃

・人を代えれば企業は派遣社員をずっと受け入れ可能

・派遣会社に「無期雇用」される派遣社員は、同じ派遣先の職場でずっと働くことができる

・派遣会社に派遣社員への教育訓練など義務づけ

・派遣社員の直接雇用を派遣先に頼んだり、新たな派遣先を提供したりすることを派遣会社に義務づけ

・派遣事業をすべて許可制に