安保法制の全条文 与党合意 戦闘参加 厳格基準示さず
           東京新聞 2015年5月12日

 自民、公明両党は十一日、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認をはじめとする新しい安全保障法制に関する与党協議で、関連法案の全条文に最終合意した。政府は十四日に関連法案を閣議決定し、週内に国会に提出する。集団的自衛権の行使を禁じてきた憲法解釈を変更した昨年七月の閣議決定を法制化する与党協議では、日本が戦闘に参加する基準は厳格化されなかった。経済混乱の際に集団的自衛権を行使する可能性も排除しなかった。

 安保法制は、集団的自衛権の行使容認のほか、周辺事態法を改正して地球規模で米軍の戦闘などを支援できるようにする重要影響事態安全確保法案、「国際社会の平和と安全」を目的に他国軍の戦闘を随時支援できるようにする国際平和支援法案が主な内容。これらに加え、あらゆる事態に「切れ目なく」対応するとして、海外での自衛隊の活動を大幅に拡大する。

 集団的自衛権の行使容認については、武力攻撃事態法改正案で、他国への武力攻撃が発生し「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」事態を「存立危機事態」と規定。自衛隊法改正案は、存立危機事態の場合には武力行使できることを明記した。

 集団的自衛権の行使を可能にする主な法改正はこれだけで、何が存立危機事態なのかの明確な基準は示さなかった。安倍政権は、原油や天然ガスが国内に入ってこなくなるような経済混乱は存立危機事態に該当する可能性があるとして、中東での戦時の機雷掃海を集団的自衛権行使の事例に挙げる。

 こうした法解釈に基づき、日本に波及する何らかの経済混乱が海外で発生した場合に「自衛」を名目にした武力行使が広がっていく恐れが残った。

 与党は、閣議決定では明確でなかった集団的自衛権行使の基準は、法制化を通じて厳格化すると説明していたが、法案には閣議決定で示した「武力行使の新三要件」の要素を盛り込むことにとどまった。