鹿児島・川内原発:再稼働差し止め却下 
 新基準「不合理な点ない」  
            毎日新聞 2015年04月23日 西部朝刊


 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働差し止めを地元住民らが求めた仮処分申請で、鹿児島地裁は22日、原子力規制委員会の新規制基準や、基準に適合するとした規制委の判断の合理性を認め、申し立てを却下した。前田郁勝(いくまさ)裁判長は「申立人の人格権が侵害される具体的危険性もない」と指摘した。福井地裁は14日に関西電力高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを命じる仮処分決定を出しており、判断が分かれた。

 住民側は決定を不服とし福岡高裁宮崎支部に即時抗告する。川内原発は2014年9月、再稼働の可否を決める新規制基準の適合性審査に全国で初めて合格。1号機は使用前検査に入っている。九電は予定通り7月上旬の再稼働を目指す。

 申し立てたのは鹿児島、熊本、宮崎県の住民12人。決定は、まず新規制基準について判断し「最新の科学的知見に照らし、不合理な点はない」と評価。規制委の審査も適切とした。

 最大の争点は、耐震設計の基準となる基準地震動(想定する地震の最大の揺れ)の妥当性だった。住民側は「過去の地震の平均像を基に策定しており過小だ」と訴えていたが、決定は「地域的な傾向を考慮して平均像を用いることは相当」とした。

 05年以降、4原発で5回、基準地震動を超える揺れが観測されたが「基準地震動の策定には地域的特性が考慮されている」と指摘。原子炉施設の耐震設計は「十分な余裕が確保されている」として九電側の主張を認めた。火山の危険性についても争われたが、川内原発周辺に五つのカルデラ(噴火でできた広大な陥没地)があり、危険性が否定できないとする住民側に対し、前田裁判長は「学者間で破局的噴火の危険性が高まっていると具体的に指摘する見解は見当たらない」と指摘した。【杣谷健太、土田暁彦、鈴木一生】