政府・自民党は今国会に提出する安全保障関連法案について、日本周辺有事を想定した米軍への後方支援を可能とする周辺事態法を存続させる方針を固めた。当初、自衛隊の多国籍軍などへの後方支援を地球規模に広げるため廃止を検討したが、存続を求める公明党に配慮した。一方で、後方支援に向けて自衛隊の海外派遣を常に可能とする「恒久法」を新設する考えだ。
政府側は、13日から始まる安保法制をめぐる自民、公明両党の与党協議でこうした考えを提示する。両党は3月中旬をめどに基本方針を決める予定だ。
昨年7月の集団的自衛権の行使容認を含む閣議決定は、従来の「非戦闘地域」という考え方を廃止。その上で、自衛隊が派遣された場所で戦闘が行われていなければ、他国軍への後方支援ができるように自衛隊の活動の範囲や内容を広げることを認めた。
政府・自民党は閣議決定に基づき、後方支援の範囲に制約がある周辺事態法を廃止し、常に自衛隊の海外派遣を可能とする恒久法の制定を目指していた。これに対し、公明党の山口那津男代表は恒久法ではなく、派遣の案件が生じるたびに国会で特別措置法を作り、自衛隊の活動の目的や期間を限定するよう求めている。
周辺事態法は原則として、国会の事前承認を定めている。政府・自民党は同法を残すことで、公明党側に一定の「歯止め」を示す狙いがある。
それでも、公明党幹部の一人は「周辺事態法が存続しても、自衛隊の活動が広がり過ぎれば意味がない」と警戒している。与党協議は、恒久法新設の是非などを中心に議論が進む見通しだ。(小野甲太郎、池尻和生)