安保法成立3カ月声上げ続ける市民 各地でデモ
                                毎日新聞 2015年12月20日

※安保法制の廃止を訴えるデモに出発する高校生ら=東京都渋谷区で2015年12月19日午後3時41分、後藤由耶撮影

 賛否を巡り国民の間や国会で大激論があった安全保障関連法の成立から、19日で3カ月が経過した。国会を取り巻いた抗議の人波は消え、安倍晋三首相は野党の求める臨時国会を開かず、安保法制への積極的な言及もない。世間の関心は薄れたかにみえる。それでも声を上げる市民や若者たちは、各地にいる。【鈴木美穂、木村健二、石川裕士、川瀬慎一朗、塩路佳子】


 ●東京
 「安保関連法で日本の安全保障環境が悪化した可能性がある。主権は国民にあるということを、改めて確認しないといけない」

 東京都千代田区でこの日午後、キリスト教系「東京YWCA」によるクリスマスイベントに招かれた「SEALDs(シールズ)」(自由と民主主義のための学生緊急行動)のメンバーが参加者に訴えた。

 シールズには最近、講演依頼が多数寄せられているという。依頼主は既成の労組から地方の市民グループまでさまざま。メンバーの一人は言う。「学生が納得できないことに抗議し、説明を求める姿がメディアを通して可視化され、市民は抗議ができるという当たり前の権利が社会に再認識されました」

 成立後、メンバーの一部が大学教授や弁護士らと政策提言を目指すシンクタンクを創設したり、貧困や格差の是正を求め路上で声を上げる別のグループが派生したりと、多様な動きが起きている。

 19日に反対の声を上げたのはシールズだけではない。東京・代々木公園周辺では安保関連法に反対する高校生ら1000人前後がデモを行った。パーカ、ニット帽、制服など思い思いの姿で、軽快な音楽に合わせて「民主主義って何だ?」「立憲主義って何だ?」と声を張り上げた。

 主催は高校生らの組織「ティーンズ ソウル」。千葉県から参加した高校2年の女子生徒(17)は「戦争になれば、行くのは私たち。反対の声を上げるのは普通のことです」。

 ●大阪

 大阪市では高校生らでつくる「T−ns SOWL west」(ティーンズ・ソウル・ウエスト)が、御堂筋をデモ行進した。中高生約30人に支援者を加えた約200人(主催者発表)が参加。「うちらの未来に戦争いらん」と声を上げた。

 先導のトラックの荷台では中高生がスピーチ。受験勉強の合間に参加した堺市の高校3年の女子生徒(18)は「勉強したり遊んだり、私たちの幸せは平和の上に成り立っている。この幸せを守るために声を上げることが大切です」と主張した。

 ●広島

 広島市中区の繁華街でもデモ行進があり、商店街の入り口には市民団体が「戦争法を私たちは止める」と書いた横断幕を掲げ、署名を呼びかけた。高校2年の次女と署名した広島市西区の主婦、及川由美子さん(51)は「世界の情勢が不安定で、戦争に向かっているように感じる。安倍首相はアメリカのご機嫌取りのような政策をやめ、世界が平和になるよう考えてほしい」。

 ●京都

 京都市内では「戦争アカン!京都おんなのレッドアクション」と「安保関連法に反対するママの会@京都」が共催で、四条河原町周辺を行進した。約150人(主催者発表)の参加者は「ママは戦争しないと決めた」などと声を上げ、政府への怒りを表すためにマフラーなど赤色の物を身につけて抗議。2歳と5歳の娘を連れて参加した京都府長岡京市の主婦、山地みのりさん(35)は「強行採決を忘れない。子供にも、母親が抗議の声を上げている姿を見てもらいたい」と話した。

 ●奈良

 奈良市では「戦争をさせない奈良1000人委員会」が集会を開き、「シールズ関西」のメンバーでニュージーランド在住の大学生、田中和琴さん(20)が講演。「戦争になれば自国だけじゃなく、相手の国も誰かが犠牲になる。9月、民主主義が崩壊した日を忘れない。しかし、また(民主主義を)始めよう。私たちには間違いが起こらないよう学び、伝える責任がある」と強調した。

 ●北九州

 北九州市のJR小倉駅前でも、安保法成立後にできた市民団体「平和をあきらめない北九州ネット」が初めて集会を開いた。事務局の池上遊弁護士は「戦争を正当化する法律は許さない。未来の子供たちの命を絶対に渡さないという思いで活動を続けよう」と訴えた。