読売新聞社説:辺野古法廷闘争 普天間の危険除去こそ公益だ
米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、政府と沖縄県の主張が全くの平行線である以上、司法の場を決着の契機とするのは有力な手段だろう。
政府は、地方自治法に基づき、翁長雄志知事を相手取り、辺野古の埋め立て承認取り消しを撤回する代執行に向けて、福岡高裁那覇支部に提訴した。
米軍基地に関し、政府と沖縄県の法廷闘争は20年ぶりだ。来年春にも判決が出るとみられる。
翁長氏は、石井国土交通相の是正勧告・指示を拒否している。提訴はやむを得ない判断だ。
訴状は、承認取り消しにより、普天間飛行場の危険性除去や沖縄県全体の基地負担軽減が実現できず、日米関係に亀裂が入るなどの不利益が生じる、と指摘した。
辺野古移設の騒音、環境への影響などの不利益は小さく、取り消しは違法だ、とも主張する。
妥当な内容だ。勝訴すれば、政府は、代執行により、県の承認取り消しを撤回できる。
翁長氏は、「銃剣とブルドーザーによる強制接収を思い起こさせる。沖縄差別の表れだ」と反発したが、正当な法的手続きを米軍の強制接収になぞらえるのはおかしい。辺野古移設は沖縄の負担軽減が目的で、「差別」ではない。
翁長氏は、県民感情をいたずらに煽るべきではあるまい。
県庁内には、翁長氏が承認取り消しの理由とする「法的瑕疵がある」との判断は客観性、公平性に欠ける、との批判がある。
埋め立てを承認した仲井真弘多前知事は、「論理が合わない点やあいまいな点は(防衛省に)何度も質問した」と語り、法律に基づき厳密に審査したと強調する。
本当に瑕疵があるなら、県の担当職員の責任を問わないと整合性が取れないではないか。
翁長氏は、国交相による承認取り消しの効力停止を不服とし、総務省の国地方係争処理委員会に審査を申し出た。効力停止取り消しを求める訴訟も検討している。
翁長氏は、辺野古移設に反対を唱えるばかりで、普天間飛行場の危険性除去への言及は少ない。
菅官房長官が「翁長氏から解決策を聞いたことは全くない。沖縄県の関係者を含めた、これまでの努力を無視している」と批判したのは、理解できる。
辺野古移設は、日米両政府と地元自治体が長年の厳しい協議と決断の末、「唯一の現実的な解決策」と判断した案だ。沖縄県内も反対一色ではない。政府は、移設作業を着実に進めるべきだ。
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