今後の与党協議や国会審議では、日本が戦争状態にはない「存立事態」で、国民の権利をどこまで制限できるのかといった点が議論の焦点となりそうだ。
存立事態は、安倍内閣が昨年7月の閣議決定で「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」があれば、集団的自衛権が行使できるとした考え方を反映。日本が直接攻撃を受けた際に使う個別的自衛権に加えて、集団的自衛権の行使を法的に裏付ける考え方として位置付けられている。
2003年に制定された武力攻撃事態法では、日本が直接武力攻撃を受ける「武力攻撃事態」や、日本が狙われているような「武力攻撃予測事態」の際には、自衛隊や在日米軍への協力を地方自治体や公共機関に義務づけ、国民の権利も一部制限できる内容となっている。政府は今回、新たに「存立事態」を設けることで、米国など同盟国が武力攻撃を受けたり、資源を運ぶ海上交通路が戦争で使えなくなったりするケースでも、公共機関や国民に同様の対応・協力を求めるようにする狙いがあるとみられる。
集団的自衛権の行使容認をめぐっては、自衛隊の出動ルールなどを定める自衛隊法も改正案が通常国会に提出される見通しだ。自衛隊が武力を使う「防衛出動」はこれまで、日本が直接攻撃された場合にしか認められていなかったが、政府はこの規定も見直す方針。自衛隊による武力行使の要件を緩和し、集団的自衛権を使う際にも「防衛出動」を認めるよう条文を変える方向だ。(今野忍、石松恒)